「週刊ダイヤモンド」2014/3/22号の特集は、『速効!「営業」学』です。
本特集のp.34-36に掲載されている大前研一さんの講義がとても参考になりました。
大前さんは、
「営業の基本はお客さんの数を「10の何乗か」で、考えることです。それによって、向いている営業マンのタイプや身につけるべきスキル、また必要な経験量がまったく違います」
とおっしゃっています。
■10の0乗=1名
タイプ:日本で1人しかいない。防衛省に武器を売るようなケース
方法:過去に実績ある企業が、組織としてアプローチする。個人で営業しても相手にされない
■10の1乗=10名
タイプ:日本で10人程度。電力会社相手のようなケース
方法:20-30年の取引実績がある企業が、数年に1回新しいタービンを売るような世界。営業マン個人が出る幕はない
■10の2乗=100名
タイプ:石油会社に巨大タンカーを売るようなケース
方法:設計トップが訪問し技術面の解説をして優位性アピール。経験ある技師長が活躍する世界。技術がわからない営業では難しい
■10の3乗〜10の4乗=1,000〜1万名
タイプ:産業機械を製造業に売るようなケース
方法:30-40代の営業マンの腕の見せ所。相手先企業の収益性・生産性まで常に把握し、タイミングを見て提案。売れないときは訪問を欠かさずに続ける。性能アピールだけでなく、相手の課題を解決する能力が必要
■10の5乗=10万名
タイプ:商店にキャッシュレジスターを売るようなケース
方法:技術的議論や問題解決よりも、心の琴線に触れるコミュニケーションが大切。「今は夜遅くまで売上集計していますが、レジ導入で夕方までに終われば、ご家族と晩ご飯をご一緒できますよ」
■10の6乗〜10の7乗=100万名〜1000万名
タイプ:マスマーケティング
方法:ソーシャルメディア登場によりマスメディアの効果が薄れている。従来のマスメディアで不可能だったナローキャスティングによるマイクロマーケティングが可能になっている。(例:観覧車が空っぽならば、観覧車の上からの風景写真をソーシャルメディアに流し、GPSで半径1Km以内の人たちに「今なら半額」と呼びかける、等) お客さんの立場になって考える「バイヤーズ・エージェント」の重要性が高まる。
大前さんは、「若い人が営業力をつけたいなら、10の6乗〜10の7乗の分野で、こうしたソーシャルメディアを使った、サイバー営業力ともいうべき、新しい営業スキルを磨く方が重宝されます」とおっしゃっています。
自分の仕事を振り返って考えてみると、2002〜2004年にCRMのマーケティングを担当した際のお客様は大企業のコールセンター長でした。
私が把握していたお客様の数は、日本全国で1000名程度(10の3乗)。個別にお客様の会社名・部署名・住所・メールアドレスを把握した上で、全社データベースで一括管理し、2-3年間、お客様担当営業と連携して、色々なキャンペーンを実施しました。
この規模であれば、個別のお客様のお悩みや課題もよく見えます。とても面白い仕事でした。
お客さんの規模にあわせて営業方法を考えることは重要ですが、「10の何乗」という形でシンプルにまとめるという発想は、とてもわかりやすいと思いました。