一瞬の判断ミスで最悪の事態を招く心臓手術の現場。
その心臓外科医として6000例以上執刀し98%以上の成功率を誇り、天皇陛下の執刀医も務めた順天堂大学教授・天野篤さんのコラム「天皇陛下の執刀医は自然体であり続ける 平常心があれば集中力は生まれる」が、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2014年9月号に掲載されています。
58歳の現在も年間450例以上の手術を行っている天野さんは、「集中力の源泉は平常心」とおっしゃっています。
この計9ページの記事からは、プロとしての心構えを教えられました。いくつか抜粋します。
—(以下、引用)—
■不測の事態に備えるために、「三の矢」まで考える選択肢もあるだろう。だが、自分の引き出しにある二の矢で絶対にケリをつける、と覚悟を決めるべきだ。
■手術中の平常心を保つためには、自分の引き出しを一つでも多く持っておくことが欠かせない。そのための準備として、私は手術に臨む前のシミュレーションを念入りに行う。
■手術前には、およそ五分間かけて念入りな手洗いを行う。この行為は手を清潔にするだけに留まらず、手術室に入るまでに心に抱いていたストレスや不安、怒りなどをすべて洗い流してくれる。….この手洗いの時間があることで、手術直前には感情をニュートラルな状態に保つことができる。
■身体的な疲労を回復させるためには、寝ることが一番の方法である。「医師は寝るのも仕事」というのはその通りで、活動中の質を高めるためには欠かせない。そう考えると、いかに睡眠の質を上げるかは重要な要素だ。
■心の健康を保つのも医師にとって必要だ。………自分がネガティブな感情を引きずらないためにも、手術であっても、事務作業であっても、私は問題を引きずらないようにしている。
■自分ができることをやり尽くせば、後は神頼みでいい。神頼みというと他力本願のように聞こえるが、やるべきをやった結果、森羅万象を味方にするという感覚に近い。
—(以上、引用)—
一貫しているのは、日々の仕事で手を抜かず、ひらすら積み重ねること。
そして心と身体を常に健康に保つための心がけ。
これらが平常心で勝負に臨むための土台であり、覚悟に繋がるのだと思います。
「神頼み」という言葉。本来は重い言葉です。
やるべきことはすべてやり尽くした上で、それでもどうしても不確定要素が残る。その不安。祈る気持ちで「ここまでやった。導き給え」と思わず手を合わせる。
安易に使うべきではないですね。
天野さんの言葉からは、多くのことを学ばせていただきました。
「やるべきことを、すべてやり尽くしたか?」
本来の意味での「神頼み」が出来るように、日々修業を重ねたいと思います。