2014/11/11-12開催の日経フォーラム世界経営者会議に参加しています。当ブログでその様子と学んだことを順次ご紹介していきたいと思います。
初日のトップバッターは、IBMのロメッティCEOと日立の中西CEOでした。お二人の講演の後、竹内弘高ハーバード・ビジネス・スクール教授が加わり、3人で対談されました。
なお、今回の第16回目世界経営者会議では、初めて全てのセッションを英語にしています。(同時通訳レシーバーで日本語も聞けます)
初日に登壇した9名の経営者のうち、日本人は中西さん1名。中西さんも、司会を務められた竹内先生、関口論説委員も、英語でした。日本のグローバル化はこんなところでも進んでいるのですね。
■IBM バージニア・ロメッティ会長/社長/CEO
3つの技術シフトが起こっている。
1つ目はビッグデータ。産業界における天然資源になりつつある。産業界におけるデータは年間40%で増大している。これをアナリティックス技術で分析するかどうかで、勝者と敗者が明確に分かれる時代となった。
2つ目はクラウド。90%の新規ソフトウェア開発がクラウド上で行われている。クラウドの意義は、業務におけるスピードとアジリティ(俊敏性)の獲得、および新たなビジネスモデル構築が容易になったことだ。
3つ目はソーシャルとモバイル。日本は一人当たりのソーシャルデータが世界一だ。パーソナライゼーションが進んでいる。ここではセキュリティが課題だ。
このように3つの大きな技術シフトが同時に起こったことで、全産業界に影響を及ぼしている。IBMはこのために、ワトソンに10億ドル(1150億円)を投資している。
ここでロメッティCEO自身で、ワトソンの活用事例のデモを行いました。私が記憶する限り、IBMのCEOが自身でデモをするのを見たのは、これが初めてです。
ニューヨークのがんセンターで実際に使われている乳がんの診断の画面の様子でした。症例データを元に数百の治療方法の中から、1000万ページの文献データを元に、診断結果を、その診断理由とともにワトソンが提示します。
ロメッティCEOは、「これは『見る』『知る』『予測する』という意思決定プロセスの変革である」と締め括りました。
パッションを持ってプレゼンしつつ、全ての言葉をキッチリと数字でロジカルに裏付けているあたり、さすがだと思いました。
■日立製作所 中西宏明会長兼CEO
日立の1990年からの25年を見ると、1998年、2001年、直近では2008年に大きな赤字を出した。現在復活している。
ソーシャルイノベーション事業を進め、事業ポートフォリオを組み替えた。2009年と2013年の売上比率を比較すると、消費者向け事業は16%から7%に減少する一方、高技術素材は36%から44%に拡大、ITは27%から28%に、電力インフラ・産業用は21%で変わらずだ。
ソーシャルイノベーション事業を進めているのは、市場と顧客、社会トレンド、技術革新といった3つの変化があるから。そこでクラウドとビッグデータというITを活用して、ソーシャルイノベーション事業を推進している。
たとえばハワイ・マウイ島では、2030年までに再生エネルギー比率40%を達成するために、エネルギー管理システムを提供している。
水資源の有効利用も進めている。インドでは海水の淡水化事業を進めている。
顧客視点でのソリューションとサービスを提供する。
顧客の課題→製品・システム→保守→システム運用→課題解決
このように運用まで一括して請け負えるのが日立の強みだ。
■竹内弘高ハーバード・ビジネス・スクール教授と、ロメッティCEO・中西CEOの対談(敬称略)
竹内:お話しを聞いていて、二人とも事実に即した楽観主義 (fact based optimism)だと感じたが、どうか?中西さんにはアベノミクスに対するお考えも含めお聞きしたい。
ロメッティ:現代は、災害や疾病など、とても困難な課題が山積している。しかし一方でそれらを解決するための技術もある。だからfact based optimismが大切だと考えている。
中西:アベノミクスで一番重要なのはデフレ脱却。マインドセットは変わったと思う。日本企業の課題は課題はグローバル化だ。どこに目標を定めて、どう攻めるかだ。ここで日本の高い技術が活きる。だから私もfact based optimismだ。
竹中:いかに企業文化を変革したのか、ご自身の体験でお話しいただきたい。
ロメッティ:会社を改革するのは、私の任務だ。まず、長期的な視点を持つ。そして過去にこだわらない (don’t protect the past)。そして自分たちを製品で定義しないことだ。特に技術系企業は製品や競合で定義しがちだ。そして人材への投資も必要だ。IBMではThink academyという仕組みで最新技術を学んでいる。
中西:「日立復活」と言われたが、事業ポートフォリオ変革のために、リソースを未来へシフトする意思決定自体はそんなに難しくなかった。重要なのは、考え方の変革だ。社員をいかにアグレッシブにして過去にこだわらないようにし、顧客に目を向けさせるか。これまで国内市場中心だったが、グローバル化を推進する必要がある。多様化がキーワードだ。異文化、海外の同僚との交流などを推進していく。
日米を代表する企業のトップのお話をお聞きし、改めて企業変革において、社員の考え方の変革がカギになることを実感しました。
オフィス永井が企業様にご提供している「戦略的研修」について、3週間前に当ブログで書きました。
改めてこの「戦略的研修」が現代の企業に対する一つの解決策であり、さらにそこで得られた学びを著書の形で広く世の中のビジネスパーソンにお伝えしていくことで社会に貢献できることを実感しました。
世界経営者会議では19名の経営者が登壇しています。また追って当ブログでご紹介していきたいと思います。