少年時代の私にとって、Nikonはまさに雲の上の存在でした。
私が写真を始めた頃は、最高峰カメラは既にNikon FからF2に移っていました。F2を自由自在に操る先輩が、とてもまぶしく見えたことをよく憶えています。
私のNikonに対する印象は、「ひたすら真面目に作られた、誇り高いプロの道具」でした。
そのようなNikonですが、今やこちらに書かせていただいたように、顧客情報や販売情報などを集約してスピーディーに分析する専門組織「マーケティングラボ」を作り、大きな成果を挙げています。
考えてみれば、かつてのNikonはマーケット・インの会社ではなく、ひたすら技術的に最高のモノを追い求め、かつそれを実現できる技術も匠も揃っていた徹底的なプロダクト・アウトな会社でしたので、このように顧客の声を手間隙かけて分析することはあまりなかったのではないでしょうか?
当時はNikonはそれこそ孤高の存在でしたから、この方法でうまくいっていたのだと思います。
このようなNikonがどのように顧客志向に変革していったかが、「神話の世界から降りてきたニコン」に詳しく紹介されています。
カメラの世界では、それこそ「Nikon派≒Nikon教」の人や、「Canon派≒Canon教」の人がいたりします。その意味でも、「神話の世界から降りてきた…」は、まさに言い得て妙だと思います。
記事を読むと、自分達が作る製品に高い誇りを持っていた会社が限界に突き当たり、トップのリーダーシップで顧客志向に変わっていく様子が、よく分かりますね。
一時はデジタル一眼カメラのシェアで独走していたCanonに対し、今年、Nikonはトップシェアを奪い取り、最近は今まで製品ラインアップになかったフルサイズカメラNikon D3も発表しました。
顧客志向+製品への高い誇りが組み合わさると、素晴らしい結果が生まる、ということですね。
私個人はCanon EOSシリーズがメイン機種なので各種機材をCanonで揃えていますので、個人的にはCanonにいいカメラを出して欲しいところですが、是非Nikonも最高のカメラを出し続けていただき、業界全体がより高い次元で競争するようになっていただきたいですね。