低炭素社会への障害となる日本の「神話」


ここ数ヶ月間の日本経済新聞の社説は、地球温暖化に対する日本の取り組みに対して様々な提言を行っています。具体的な論拠に基づいて論じているので、説得力があります。

本日(2/25)の社説「低炭素社会への道-サミットへ向け日本の理念と政策を」では、ここ10年間日本で流布され続けていながら世界で通用しない「神話」を紹介しています。以下、要約しながら引用します。

—(以下、引用)—

■神話:京都議定書が日本にとって著しく不利だという根拠のないネガティブキャンペーン。安政以来の不平等条約、省エネが進んだ日本は乾いたタオルでもう絞れない、旧東欧を統合したEUは排出削減余地が大きく日本は不利、世界の排出量の40%をしめる米中が義務を負っていないから実効性がない……。

■事実1:京都議定書の親条約、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)は産業革命以来の累積排出量や現在の国民一人当たりの排出量を勘案し先進国と途上国は「共通だが差異ある責任」を果たすと決めている。京都議定書はその第一歩。全員参加の前の「お試し期間」として、まずは先進国が責任を果たす枠組みだから中国は義務を課されていない。それは日本を含む世界が合意したこと。米国は国益を理由に離脱。

■事実2:EU 8%/米国7%/日本6%という京都議定書の割り当ては本当に日本に不利なのか?6%のうち日本は森林が吸収する分として3.8%を認められ、海外での削減協力で1.6%まかなう。日本社会の実質削減目標はわずか0.6%。ドイツに認められた森林吸収はたった0.4%。省エネ大国を自称する日本に世界はちゃんと配慮している。

■事実3:日本がGDP当たりのCO2排出量が世界一低いのは家庭と運輸部門の排出が他の先進国より抜きんでて低いから。温暖な気候に加え、狭い家と国土が排出源単位を抑制している。オイルショック直後は文字通り世界一の省エネを誇っていた産業部門も、少し緩んだのか今は必ずしも世界一ではない。排出権取引を導入し、自然エネルギーの買い取り制度を強化したドイツは森林吸収分がわずか0.4%でも1990年比で20%近い排出削減を実現、経済成長も減速させていない。メルケル首相はこれで国際社会の信頼を得、昨年のハイリゲンダム・サミットで米国の交渉復帰と中印の参加を取り付けた。

—(以上、引用)—

日本の中で一方的にマスコミの情報に接していると、事実が見えにくくなり、比較的容易に事実を見誤ってしまいます。

このような時こそ、全体の空気に流されずに警鐘を鳴らし続けるマスコミの存在は貴重です。

また、我々も事実を積み重ねた情報に基づいて判断するようにありたいものです。