「グローバルな人材」イコール「英語ができる人」、ではない


日本IBM取締役専務執行役員のポール与那嶺さんが、ハーバード・ビジネス・レビューで「人材育成よりまず会計基盤の整備。グローバル化はここから始めるべき」という対談をされています。

この対談の冒頭、与那嶺さんはグローバル人材についてお話ししています。

—(以下、引用)—

――「グローバル対応」の中で、相談内容として一番よく挙がる課題は、どんなものでしょうか?

 もっともよく話題に挙がるのが、「グローバルな人材をどう獲得するか・育てるか」という課題です。みなさん「英語力」に着目されていますが、「グローバルな人材」イコール「英語ができる人」ではないと思います。どこの国の人を相手にしても、はっきり、言うべきことを言い、するべきことをする人こそが、グローバルな人材です。それさえできれば、多少英語がおぼつかなくても何とかなるものです。

—(以上、引用)—

これはまったく同感です。

私は22歳の時に日本IBMに入社し、開発部門でいきなり海外製品開発研究所への日本語サポート支援の技術部門に配属されました。

以前、「TOEIC 475点からの英語上達方法」に書きましたように、当時のTOEICの点数は475点。その後2年間は、長時間の通勤時間などを使って勉強し、2年後に795点まで上げました。

1980年代の当時、英語を使う相手は本社の米国人が中心。ですので目標は、ネイティブと同等に英語が話せることだったのですよね。

一方で入社13ヶ月目、23歳の時に、1ヶ月間米国に長期出張して製品テストをしたこともありました。当時はTOEIC 600点をやっと超えた英語力でしたが、不思議とコミュニケーションできました。

海外とは言え、相手も同じ感情を持つ人間です。英語が出来なくても、その気になればなんとか伝わるものだ、ということはこの時に実感しました。

 

一方で、1980年代と現代が大きく変わっているのは「世界がフラット化していること」です。

1980年代はずっと続くと思われていた東西冷戦がなくなり、発展途上国だった国はいまや新興国として中間所得層が急激に増えて経済力を付け、しかもインターネットで瞬時に国境の壁を越えて、個人同士でコミュニケーションできるようになりました。

つまり、この10年間で、非英語圏の人達が一気にグローバル化しているのです。

この流れの中で、1980年代は「米国人(+英国人)と会話するための手段」だった英語は、現代では「グローバルで共通にコミュニケーションする手段」になりました。

 

そこで、新しく「グロービッシュ」という考え方が生まれています。簡単に言うと、語彙1500単語・TOEIC 500点の英語力を前提とした、非英語圏の人のためグローバル・コミュニケーションです。

確かに、非英語圏の英語力が低い人たちでも、多くの海外の人たちは気にせず英語を使っています。

分からない点があると、どんどん聞いて確認し、意思疎通を図ります。

最初に、やりたいことがまずあること。そして、英語はそれを実現するためのコミュニケーションの手段、という割り切りがあるように思います。

一方で、この「分からないと、どんどん聞く」が、日本人はなかなかできないのですよね。

 

確かに、英語ができることに超したことはないですが必須条件ではありません。英語が少々出来なくても、やりたいことが明確で、言うべきことを言い、やるべきことがやる人であれば、グローバルでも仕事の場はあるのですよね。