『企業の人材育成のミッションは「社長のコピーが何人つくれるか」』について、考えてみた


昨日に続き、武蔵野社長・小山昇さんのご著書「経営の心得」を読んで考えたことです。

この本には208の言葉があるのですが、38番目に、以下の言葉がありました。

—(以下、引用)—

人材教育とは、社長と社員の価値観を共有させる作業。

社長の考えやビジョンを理解し、その通りに行動できる。こうなったとき初めて「社員が育った」と言えます。

「社長のコピーが何人つくれるか」が人材教育のミッション。社長のコピーが多ければ、それだけ組織は堅牢になります。

「多様な価値観を認める」と言えば聞こえはいいが、中小企業には不向き。みんなが同じ価値観を持ち、同じ方向を向くからシナジー効果が生まれます。そうやって「伝える」から「伝わる」会社になるのです。

—(以上、引用)—

 

この一節は、私にとってはとても意外だった反面、納得感もありました。

 

私が勤務するIBMでは、「多様性(ダイバーシティ)」を重視しています。IBMの社員数は全世界で40万人。世界中に様々な人種がいますし、次期CEOが女性であることからも分かるように、女性の登用も進んでいます。

一方で、小山さんは「多様な価値観」は中小企業には不向き、とおっしゃっています。

「社長のコピーを作る」、「多様性(ダイバーシティ)」、そして「多様な価値観」

これらの関係はどのように考えればよいのでしょうか?

 

IBMに代表される大企業は、強力な企業文化が構築されていて、価値観が共有されています。この場合のリスクは、単一の価値観にこだわってしまって、その後の変革が阻まれ、長期的な成長が阻害されること。

IBMも100年間かけて先輩社員の皆様が築かれてきた強力な企業文化がある一方で、「多様性」を推進することで、変革への阻害を防ごうと考えているようです。

日本IBMのサイトの「ダイバーシティ(多様性)への取り組み」に、このことがまとめられています。

市場競争におけるIBMの強みの源泉は、思想、文化、人種、性別や出身地などさまざまな違いを持つ人材の多様性(ワークフォース・ダイバーシティー)であり、これこそがIBM自身とお客様とに多様な発想をもたらす基盤となっています。実際のところ、営業、製品開発、サービスの提供など広い分野で、IBMの社員構成は多様化した市場の縮図ともいえます。

人材の多様性を認めているので、おそらく、私のような変わり者社員が本を出版しても、大変有り難いことに、それが容認され、時として奨励されたりするのですね。

企業文化で価値観が共有されており、かつ多様性を重視しているのですね。

 

一方で中小企業の場合は、まず企業文化を構築して維持し、価値観を共有することが課題だと思います。だから、「多様な価値観を認める」よりも、まずは「社長のコピーが何人つくれるか」ということなのでしょう。

しかし、これは必ずしも「多様性の否定」ではないと思います。

実際、私の知り合いの会社でも、海外の人を社員に採用したり、女性の比率が大きい中小企業も多いのです。

  

オルタナブロガーには経営者の方も沢山おられますし、なかには社長ご就任前に大企業勤務経験の方もおられるので、是非ご意見をお伺いしてみたいところです。