なぜアサヒは、トップの会長が本気で反対したのに、「ワンダ」と「竹鶴」を大成功できたのか?


トップの判断が必ずしも正しいとは限りません。現場で奮闘し、最前線で仕事をしている人たちの感覚の方が、正しいことも多いのです。

 

昨日2014/6/20の日本経済新聞「私の履歴書」で、アサヒグループホールディングス相談役の福地茂雄さんが、社長から会長になられた後の思い出話を次のように書いておられます。

–(以下、引用)—

 もっともグループ経営をうたったわりに、会長としての判断には間違いも多い。アサヒ飲料が缶コーヒーの「ワンダ」で「朝に飲むコーヒー」というコンセプトの商品を発売するという。私は「人間の味覚は朝鋭い。まずいコーヒーと言われたらどうするのか」と反対した。だがワンダはこの戦略が当たり、人気商品に成長した。

 01年に子会社化したニッカウヰスキーでは創業者の名前である「竹鶴」をウイスキーの商品名につけるという。これも「創業者の名前をつけて売れるものだろうか。途中でやめるわけにはいかないし」と反対。これも読みが外れ、竹鶴ブランドは定着した。いずれも本気で反対したが、現場の強い意欲もあり、最後は押し切られた。

—(以上、引用)—-

「ワンダ」や「竹鶴」が生まれる舞台裏で、トップの会長が反対されていたというのは、とても興味深いですね。

「会長が反対しているので、この企画はナシだ」という結論になる会社も多いのではないでしょうか?

しかしアサヒさんでは、「ワンダ」、「竹鶴」を送り出し、大ヒット商品に育て上げました。

 

福地さんが反対している理由をよく読むと、「まずいコーヒーと言われたらどうする?」「創業者の名前を付けて途中でやめるわけにはいかない」と、いずれもリスク回避判断です。しかし現場はリスクに挑戦し、成功させています。

プレジデントオンラインの記事「なぜアサヒビールの社員は1%も辞めないのか」によると、アサヒビールでは部下育成が上司の最大のミッションだそうです。

福地さんは「私の反対は成功するという方程式でも生まれたようだ。」と締め括っておられますが、自分を乗り越えて成功した部下のことをなかば自慢している印象を感じるのも、この健全な社風のおかげなのかもしれませんね。