草食系男子と、グローバルの競争社会


本日(7/5)の日本経済新聞の記事「領空侵犯:『草食系男子』を美化するな」に、京大霊長類研究所の古市剛史教授が掲載されています。

—(以下、引用)—-

–オス同士が争わないサルの社会があるようですね。

「アフリカ中部の熱帯雨林にすむボノボの社会です。同じ類人猿のチンパンジーは、集団が出会うとオス同士が闘ってときに殺しに発展し、群れの中では子殺しがある。しかしボノボではオスがほとんど争わず、子殺しもない。極めて平和な社会です」

「なぜかというと、メスの地位が高いからです。リーダーのオスはいますが、力の強いメスの息子がなることが多い。オス同士が小競り合いになると母親が乗り出してきて、息子の代わりに大げんかすることもあります」

(中略)

–ヒトの社会がボノボに近づいたとはいえませんか。

「それはどうでしょうか。確かに先進国では少子化が進み、子づくりをめぐり男たちが競い合う傾向は弱まっています。しかし、ヒトの社会の中心にあるのはチンパンジーと同様、まだまだオス同士の競争原理です。女性の地位が相対的に高くなったとはいえ、ボノボのようにメス主導の平和共存の原理が浸透したといえるのでしょうか?」

「….競争を回避しているだけなのに『ボクは草食系だから』と自己正当化し、美化している。そうだとしたら困ったことです」

—(以上、引用)—-

この記事の最後に、『「ボノボはチンパンジーに比べ競争がない分、道具の発明や使用がまるで少ない」という古市教授の言葉が警鐘に聞こえた』という聞き手の言葉も紹介されています。

競争しなくなると、創意工夫が少なくなる、ということでしょうか?

 

この一日前の7/4、同じ日本経済新聞の記事「人こと:テイ・エステック社長古明地利雄氏―労働の質今や中国が世界一」で、以下のインタビューが掲載されています。

—(以下、引用)—-

「労働の質は今や中国が世界一だ」。自動車用シート大手、テイ・エステックの古明地利雄社長はこう言い切る。同社が毎年、世界各国の従業員を集めて部品の改善提案を競う世界大会で「実はこの3年間、金銀銅メダル、すべて中国人従業員が独占している」という。

一昨年、優勝を逃したある中国の従業員に「来年は頑張れよ」と励ましたところ、「その先もずっとがんばりますから」と真顔で答えが返ってきた。「励ましたつもりが、逆に励まされた」。中国ではストライキが続発し、中国リスクが多く取り上げられるが、中国の従業員へ寄せる信頼は「今も全く変わっていない」。

—(以上、引用)—-

確かに、私が知っている中国の友人は、誰もが仕事に対してとてもアグレッシブです。

IBM本社のエグゼクティブも、ここ10年間でインド人や中国人が増えています。

また、ちょっと古いデータですが、こちらに書きましたように、インドのITサービス大手であるインフォシス・テクノロジーズが2006年度に採用した従業員は36,700人、応募は1,302,400人でした。

この数字、1年分の新規採用であって総従業員数ではありません。その多くが博士や修士です。

一方で、日本では1学年の総数は1,000,000人をちょっと超える程度。インフォシスの2006年の応募者を下回っています。

グローバルに見ると、日本の外では、ものすごいスケールで、競争はますます激しくなってきています。

 

「草食系男子」という言葉は、「ガツガツせず、スマートに気配りをし、自分の将来もそれなりに考えている好青年」というイメージもあって、個人的には嫌いではありません。(モーニング連載の「シマシマ」に登場する、4人の男性のようなイメージですね)

一方で、この二つの記事を読んで、これからフラット化するグローバル社会の中で、私達はどのようにしていくのか、ちょっと考えてみるのも必要かな、と思いました。