「デジタルマーケティング」が脚光を浴びています。(なおここでは、EC、ビッグデータ、ソーシャルメディア、CMS等、ITをマーケティング活動に活用するための仕組み全般を「デジタルマーケティング」と呼ぶことにします)
中には、あたかもこれまでのマーケティングが根本的に変わるかのような論説もあります。
しかしこんな時こそ、マーケティングの基本に立ち返ることが必要なのかな、と思います。
私個人の考えですが、マーケティングの目的とは、
顧客が求める「価値」を創出し、
顧客にその「価値」をお伝えし、
顧客へ「価値」をお届けすることにより、
よりよい社会を創り上げていくこと
なのではないかと思います。
このように、「マーケティングの目的は、顧客への価値の創出と提供」と考えると、デジタルマーケティングで出来ることと出来ないことが整理できるのではないでしょうか?
まず、出来ないことは次のようなものがあると思います。
・本質的な顧客の課題を見抜き、洞察すること。…アナリティックスソリューションはかなりの程度手助けしてくれますが、考えるのはあくまで人間の頭脳です。
・顧客価値を創出すること…顧客に対する新しい価値も、ITでは生み出すことができません。
一方で出来ることは、次のようなものではないでしょうか?
・迅速な仮説検証と実行→マーケティングミックス(4P)への展開
・デジタル・チャネルの拡大(モバイル、SNS、Web)
・膨大なスケーラビリティとスピードの実現(従来比で数千倍、数万倍)
Harvard Business Review 2013年10月号に掲載されたフィリップ・コトラーのインタビュー記事「ビッグデータはマーケティングを変えるのか」で、コトラーは次のように語っています。
—(以下、引用)—-
私はこれまで、消費者にとって適切なタイミングで、適切な場所で、適切な商品を提供することが大切だと言い続けてきました。ビッグデータは、それらの要素を探し出すためのツールとして大きな可能性を秘めています。
—(以上、引用)—-
つまり「デジタルマーケティングは、マーケティングが持つ本来の目的をより確実かつ効率的に実現するための手段である」と考えるべきなのではないかと思います。
結論としては、当たり前のことですが、「デジタルマーケティング」は「目的」ではなく「手段」なのですね。
このように考えると、「デジタルマーケティング時代」では、次のようなスキルがマーケッターに求められると思います。
■顧客価値を考え抜くための洞察力。これは従来のマーケティングと同様、デジタルマーケティング時代でも変わらず重要でしょう。
■仮説検証を実践する力。デジタルマーケティングでは極めて迅速に仮説検証を何回も行えるので、従来のマーケティングよりも重要さが増していくと思います。ただこれはテクニカルなスキルと言うよりも、ひたすら仮説検証を続けるための継続力・実践力と言った方がいいかもしれません。
■分析力。数字の意味を読み取れるスキルです。従来のマーケティングでも重要でしたが、重要さが増していくでしょう。私の経験では、色々な数字と格闘していくことを通じて身についていきました。最新分析ツールを使いこなせるようになると、より容易に分析できるので好ましいかもしれません。
■新しいチャネルへの理解。Webに留まらず、モバイル、SNSと顧客チャネルは広がっています。これらを活用していくことが必要になります。
基本の部分は「デジタルマーケティング時代」でも意外と変わらない一方で、沢山学ぶことはありそうです。