「コーヒーブレイク」というコンセプトで、新市場が創り出され、コーヒー市場は拡大した


あるコンセプト(概念)が世に広がり、人々に認知されることで、新市場が創り出されます。

その一つの例が、「コーヒーブレイク」という考え方。

 

ずっと仕事をやっていて、一息入れたい時に、「じゃぁ、コーヒーでも飲むか」と考える人は多いのではないでしょうか?

実は、この「コーヒーブレイク」という概念は、1952年にアメリカで生まれたものなのです。きっかけは自販機でした。

「コーヒーの歴史」(マーク・ペンダーグラスト著)では、このように紹介されています。

—(以下、p.299より引用)—

自動販売機は、アメリカ人が最も大切にしている伝統的な習慣、つまり「コーヒーブレイク」の定義を促進した。…この言葉は1952年に汎アメリカ・コーヒー局によって発明されたものだった。年に200万ドルの予算で、同局はラジオや新聞や雑誌を使ったキャンペーンを開始した。テーマは「あなた自身にコーヒー・ブレイクを贈り、コーヒーがあなたに贈るものを受け取ろう」というものだった。…戦時中に軍需工場で始まった習慣に名前と市民権を与えたのだ。

コーヒーを飲むための休憩時間は、軍需工場の労働者たちにほどよい休憩とカフェインによる元気づけを与え、生産性を向上させたのである。このおおがかりなキャンペーンは、新聞の一般的なニュースとしても取り上げられた。

—(以上、引用)—

生産性が向上するという実利的な効果もあり、コーヒーブレイクは至る所で広がり、この言葉は英語の一部になりました。

 

では米国でどの程度普及したのでしょうか?

本書では次のように書いています。

—(以下、p.299より引用)—

数年前には,コーヒーを飲むための休憩時間などというものは誰も聞いたことがなかったのに、1952年に世論調査では、調査の対象となった会社の80パーセントがコーヒーブレイクを導入していた。

—(以上、引用)—

 
短い期間で多くの人たちが「コーヒーブレイク」という言葉を認知していたことがわかります。

  

多くの人たちがある概念を認知することで、市場が生まれます。

たとえば「スマートフォン」という概念が生まれ、多くの人たちが認知したことで、「スマホ関連市場」が生まれました。

企業の生産性を高める「コーヒーブレイク」という概念も、「工場の休憩時間にコーヒーを飲む」という新市場を生み出し、コーヒー市場の拡大に一役買っていたのですね。