「ぼくらの頭脳の鍛え方 必須の教養書400冊」(立花隆、佐藤優)を読みました。
まずお二人の読書量がケタ違い。
立花隆さんの蔵書数は7-8万冊、毎月の本代が十数万円。
佐藤優さんの蔵書数は1万5千冊、毎月の本代が約20万円。
本書は初心者向けのガイドブックではありません。
本書を読むと、幅広い分野の圧倒的な読書量が、教養をかたち作り、頭脳を鍛えるということがよくわかります。
興味深い箇所が満載で、夢中になって読みました。
そのうちのごく一部をご紹介します。
—(以下、p.18から引用)—
佐藤 彼(毛沢東)は文化大革命のときに、民衆を愚民化して操りやすくするためにはリテラシー、読書能力を落とせばいいと考えた。….中国のように本を読むのはエリートという伝統があるところで、読書文化を絶ち、思考する脳回路を停止させようとしたんです。
—(以上、引用)—
この一節からも、読書の大切さがよく伝わってきます。
私はネットからかなり情報を得ている方だと思いますが、それでもネットで得られる情報と、読書で得られる情報は、深さがまるで違うことを実感しています。
—(以下、p.30から引用)—
立花 …狂った政治思想はみなユートピア思想から生まれている。政治の基本は、ユートピアなんてものはないし、作ろうとすれば逆ユートピアを生むだけだったという歴史の現実を直視するレアリズムの認識から出発すべきです。
—(以上、引用)—
この認識を持っているかどうかの違いは大きいと思います。
—(以下、p.124から引用)—
立花 プラグマティズムはアメリカ的なものの考え方を理解する上で、いちばん重要なものの一つですが、日本では原典が読まれないから誤解している人が多い。ある観念が正しいかどうかは、それが現実化したときの結果によってのみ判定される。「樹はその実らす果実によってのみ判定される」という考え方です。それはイエスの哲学だったし、キルケゴールの哲学だった
佐藤 正しいことをやれば、どうして成功するのか、それは神様が判定しているからだ。これがプラグマティズムなんです。…だから、力によって戦争に勝利することを正当化することができる。
—(以上、引用)—
短い文章ですが、自分の米国人とのビジネス経験でもその通りであり、ハラ落ちする話だと思いました。
米国人と仕事をするビジネスパーソンは、プラグマティズムを理解すると、相手がどのように考え、判断するかがよく分かると思います。
—(以下、p.124から引用)—
立花 日本人は頭の中からゲオポリティクスが一切消し去られてしまった珍しい国民となってしまった。ゲオポリティカルに世界を見ることができないから、日本人は独自の世界戦略を立てることができない。日本人に欠けている最大の教養アイテムはゲオポリティクスだと思います。
—(以上、引用)—
本書では紹介されていない本ですが、大学時代に「悪の論理―地政学とは何か」を読んで衝撃を受けたことを思い出しました。
本書でも書かれているように、占領軍が地政学を禁止したことで日本人にはこの考え方がまったく欠けています。ビジネスパーソンがグローバル戦略を考える際には必要な教養なのかもしれません。
—(以下、p.245から引用)—
立花隆による「実践」に役立つ14カ条
….
(7) 本を読みながらノートは取るな。どうしてもノートを取りたいときは、本を読み終わってから、ノートを取るためにもう一度読み直した方が、はるかに時間の経済になる。ノートを取りながら一冊の本を読む間に、5冊の類書を読むことができる。
—(以上、引用)—
私は時々本のサマリーをノートにまとめることがありますが、これは実感します。
気になった場所毎にノートを取ると、読書のリズムが失われてしまうのですよね。気になった部分に傍線を引いたり折り曲げたりして、後で見直して必要な箇所をメモを取る方が効率的です。
本書のごく一部を引用させていただきました。
膨大な知識が詰まっており、読んで満足感も多かった一冊でした。