数週間前の放送ですが、4月15日に放映されたNHKのプロフェッショナル「輝け社員、よみがえれ会社」は、工場再建請負人の山田日登志さんの特集でした。
山田さんは、工場を見ただけで実に多くの無駄=要改善点を見つけ出します。
番組では、初めて訪れた工場で、2時間で50件の改善点を見つけた様子が放映されました。
このような改善点を見つけるスキルにかけては、山田さんはまさにスーパーマンです。
しかし改善点を見つけるだけでは、真の改革は図れません。
山田さんは改革を真に工場に定着させるために、社員が自主的に改善を図れるようにすることを心掛けています。
番組では、老舗の名門家具工場で、職人達に困難な課題を課すことで、職人達が短時間で自分で夢中になって解決策を見出し、その後も継続的に改善を図ろうとする様子が紹介されました。
この番組を見て思い出したのが、「ホーソン実験」です。
「ホーソン実験」とは、米国・シカゴ郊外のウェスタン・エレクトリックのホーソン工場で、1920年代から1930年代にかけて、工場の組立工に対して心理学教授レスリスバーガーと精神科医師エルトン・メイヨーが行った調査実験です。
この実験では、色々と条件を変えて作業能率を測定しましたが、作業条件を変えるたびに常に向上が図られました。
最後に、一番最初の条件に戻したところ、不思議なことに、さらに作業能率が向上しました。
組立工の作業能率が向上した原因は、労働条件によるものではなく、このような調査実験に選ばれたこと自体で、組立工の目標意識が向上したことによるものでした。
山田さんの工場改革も80年前のホーソン実験も、共通するのは「目標意識」が作業能率やビジネスの結果に何よりも大きな影響を与える、ということです。
やはり、改革に必要なのは、社員一人一人の心の中にある「やる気」にいかに火をつけるか、ではないでしょうか?
以前、こちらのエントリーで1971年のディシの「内発的動機付け」研究をご紹介した際にも書きましたように、お金等の物質的なインセンティブによる「やる気」の成果には限界があります。
"Stop the pay, stop the play" (「お金がもらえなくなると、何もしなくなる」)
ということです。
自分で色々と工夫したことが、目に見えて改善結果に繋がっていると分かることが、非常に重要なのではないかと思います。
「リアルタイムな見える化の全員の共有」は、マネージメントが思っているよりもはるかに重要なのかもしれません。