事実を軽視したり、無視するとどうなるか?
第二次世界大戦の日本軍の戦いから学ぶことができます。
第二次世界大戦末期の1944年10月、日本本土に米国海軍の空母機動部隊の大軍が迫りました。
日本軍の基地航空隊は奮戦。「台湾沖航空戦」と呼ばれる戦いで航空機300機を失うも大本営は華々しい戦果を発表しました。その成果は次の通り。
空母19隻、戦艦4隻、巡洋艦7隻、艦種不明15隻撃沈・撃破
敗色濃厚の太平洋戦争は一気に転換。攻勢の絶好の機会となりました。
この大戦果に基づき、日本軍はレイテ島決戦の実施を決定、大兵力をフィリピンのレイテ島に輸送艦で送りました。
実際には米軍機動部隊の被害はわずか大破2隻と小破1隻。大規模機動部隊はほぼ無傷でした。後にこの事実を知った日本海軍。しかし陸軍に知らせませんでした。
この結果、レイテ島への輸送兵力は存在しないはずの米軍機動部隊の空襲で多くが沈没。レイテ島決戦は惨敗。さらに数万人の将兵が命を落としました。
なぜこんな事が起こったのでしょうか?
基地航空隊は慣れない夜間攻撃で炎上する味方機を敵艦と誤認する等、戦果把握は困難を極めました。一方で現場には、「撃沈できたか分からない」と言えない空気もありました。
現場から上がってくる過大戦果をそのまま集計した結果が、大本営発表になりました。
間もなく情報将校が現地で将兵に聞き取り調査を実施。「実際の戦果は重巡洋艦数隻程度」と大本営に報告しましたが、この報告が顧みられることはありませんでした。
もしかしたら当時の作戦部はこう考えたのかもしれません
「確かに戦果の数字は少々怪しいかもしれない。でも数字はあくまで単なる数字だ」
「われらが将兵は、現場で大変な思いをしている。これにはしっかり応えたい」
「今は未曾有のピンチだ。今頑張らずにどうする?信念は岩をも貫く。神風がきっと吹くはずだ。これまでもそうだった」
(周りもそんな空気だし)
「そもそも事実を伝えると厭戦気分も広がる。伝えるわけにはいかん」
皆がいい人。でもちょっと無責任。
この戦いのパターンは台湾沖航空戦に限りませんでした。第二次世界大戦を通じて日本軍はこのような戦い方を繰り返してきました。
この戦い方を積み重ねて、戦死者230万人・民間死者80万人というおびただしい犠牲者を出した末、敗戦しました。
日本軍が敗れ続けた理由。
物量で圧倒的に米国に劣っていたのは確かに事実です。しかし次の3つも大きい要因ではないでしょうか?
・事実と情報を軽視していた。主観的解釈と希望的観測で動いていた。
・過去の戦いの経験から学ばなかった。信念を重視していた。
・過度に空気に支配されていた。「これは言えない」という雰囲気があった。
一方で米軍は常に過去の戦いを分析して学び、戦略を練り直しました。
この日本軍が敗れ続けた理由。現代の日本ではどうでしょうか?
グローバルコミュニケーションでは、事実に基づいたロジックが求められます。
多くの日本人が仕事の必要性に迫られてグローバルコミュニケーションを始めることは、もしかしたら、この日本軍が敗れ続けた理由から日本人が抜け出す上で大きなきっかけになるかもしれません。