3年前にITメディアエンタープライズの記事「値引き販売という麻薬」でも書かせていただきましたように、安易な値引きは、企業にとって麻薬です。
日頃そのように思っていましたら、先日、日経ビジネスオンラインで『値下げという「麻薬」を断つ勇気』という記事を拝読し、まさに「我が意を得たり」、と感じました。
この記事では、回転寿司業界が2008年から「一皿90円」の安売り競争を続けた結果、売上は大幅に伸びたものの利益は減少し、企業の体力が奪われた事例が紹介されています。
成城石井の社長だった大久保恒夫氏(現セブン&アイ・フードシステムズ社長)の言葉が紹介されています。
—(以下、引用)—
「先に価格を下げれば、一瞬は売り上げが伸びます。でも、同業他社も追随するので、しばらくすれば売り上げは必ず落ちていきます。そして結局、みんな儲からなくなるのです。いわば、安売りは麻薬のようなものです。やめたい、でもやめられない」(大久保氏)
—(以上、引用)—
また、この記事では、高価格に設定した高品質の商品を販売して成功している成城石井の事例も紹介されており、成城石井の担当者の言葉も掲載されています。
—(以下、引用)—
「お客様の動向を見ていると、すべてのものにお財布のひもを固くしているのではないと感じます。本当に欲しいもの、自身の生活と照らし合わせて価値を感じられるものが適正価格で売られていると判断すれば、多少高額な商品でもご購入いただけるのです」(成城石井)。
—(以上、引用)—
それでは、企業はどのようにすればよいのでしょうか?
記事は、以下の言葉で締めくくられています。
—(以下、引用)—
…だからと言って顧客が価値を感じる商品を作る努力をやめてしまっては、脱デフレはできない。価値を創造する決意と、不断の努力。それこそが、デフレの波を食い止める手段だと思うのだが、いかがだろうか。
—(以上、引用)—
これはまったくおっしゃる通りだと思います。
顧客の言うなりになり同質の競争になってしまって価格勝負に陥っている現状から、顧客が感動するものを見極めて異質の競争に持込み価値勝負にシフトすることが、今、必要なのだと思います。
11月末に中経出版様から上梓させていただいた「100円のコーラを1000円で売る方法」では、まさに「顧客の言うことには全て対応していて、多機能・高品質だけど、差別化できず、価格勝負に陥っていて低収益」という状況から脱却するために、奮闘する主人公・宮前久美の姿を描かせていただきました。
記事を拝読して、「価格勝負から、価値勝負へ」というのは、これからの一つの大きなキーワードになってくるのではないかとの思いを強くしました。