4月22日の日本経済新聞夕刊のテレビ欄に『視聴率の高低 「差がある」と言える範囲は』という記事がありました。
市場データからマーケティング戦略を考える際に参考になる記事なので、ちょっと考えてみましょう。
—以下、記事の内容—
この記事では、この春の新ドラマを視聴率順に並べ、統計手法で視聴率に有意な差があるかどうか調べています。
関東地区では600件のサンプル調査での視聴率を算出しています。この場合、視聴率の差が最低でも4.5%以上ないと統計的には有意な差はありません。
従って、「トップキャスター(フジ系)」(視聴率23.1%)と「渡る世間は鬼ばかり(TBS系)」(視聴率20.5%)との間では、実は視聴率に有意な差はなく、視聴率が1%上がった・下がったと一喜一憂するのはあまり意味がないことである、と、この記事は結論付けています。
—以上、記事の内容—
さて、「統計」とか「有意」というと難しく感じるかもしれません。分かり易い例で考えてみましょう。
例えば、皆さんのご友人同士5人でゆうべ何の番組を見たかを話し合った結果、番組1が5名中1名、番組2が5名中2名、番組3が5名中1名、番組4が5名中1名、だったとします。視聴率は、番組1/3/4が20%、番組2が40%、となります。
この場合、視聴率が一番高いのは番組2である、と言えるでしょうか? この仲間内では正しいですが、世の中一般に適応するのはちょっと無理がありそうですね。何故でしょうか?
そうですね、サンプル数が5件と少ないからです。サンプル数を30件にするとどうでしょうか? 感覚的にはまだ少なそうです。では世の中の全員を調べればよいか、というと、調査コストが膨大になり現実的ではありません。
そこで、限られた数のデータをサンプル調査して、世の中全体の動向を推測しよう、という「推測統計」という手法で、視聴率を把握することになります。
こちらのビデオリサーチ社のサイトでは、視聴率の誤差について詳しく説明しています。
このサイトでは「信頼度95%」という言葉が出ています。他に「有意水準5%」とか「危険率5%」という言葉もありますが、同じ意味です。要は、「95%の確率で信頼できる数字である (5%の確率で間違っている可能性がある)」という意味です。
引用した新聞記事では、ビデオリサーチの数字よりも大きい標本誤差を適用しているので、もしかしたら信頼度99%で見ている(つまり、より厳格に見ている)のかもしれません。
この標本誤差は、得られた数字とサンプル数によって変動します。サンプル数が多い程、誤差も少なくなりますが、誤差を半分にするためには、サンプル数を4倍にする必要があり、当然調査コストもかかります。この辺りは、調査目的とコストの兼ね合いで考える必要がありますネ。
ということで、マーケティング戦略を考える際に、調査サンプル数が100件程度の市場調査レポートで「Aが10%で、Bが11%になっている理由は何か?」という議論することは、実はあまり意味がありません。このような調査レポートは、むしろ全体像把握のために活用すべきです。
市場調査レポートを見る場合は、必ずサンプル数とその調査プロフィール(つまりサンプルの偏り)を把握した上で、どのように見るかを考える習慣を身に付けたいですね。