企業の本質と、見えざる神の手


唐突な質問ですが、企業とは何でしょうか?

これについては、ドラッカーをはじめ各方面の識者が様々な意見を述べています。

その中の一つの意見として、専修大学商学部 黒瀬直宏教授が、本日(8/29)の日刊工業新聞の記事「自立型中小企業を目指して:16 企業外との情報ループ 製品開発や販売戦略に活用」で、

「企業の本質は情報発見システムだ」

と述べています。

—(以下、引用)–

市場経済下では、販売とは不確実なものだ。企業とは販売を確実なものにするため、情報発見活動を展開せざるを得ない。市場競争の本質は情報発見競争で、企業の本質は情報発見システムなのだ。

—(以上、引用)—

アダム・スミスは「国富論」の中で、

「個々のメンバーがそれぞれ利益を求めて自由に利己的な行動を行えば、マーケット・メカニズムにより全体で調和が取れ、効率的な配分が実現する。つまり、私益を追求することで『見えざる神の手』が働き万人の公共善をもたらす。」

と述べましたが、この見えざる神の手を動かすカギが企業の「情報発見システム」である、とも考えられますね。

黒瀬教授は、情報発見を助けてくれるパートナーとして、「顧客」と「他企業」の二つを挙げています。

—(以下、引用)–

第一に顧客との情報ループが不可欠だ。企業にとって顧客は買い手というだけではない。需要や技術に関する「場面情報」の発見を助けてくれるパートナーだ。

(中略)

第二に優れた情報発見システムを構築している中小企業は、他企業との情報ループも構築している。中小企業は情報発見の主体となる人的資源が不足している。そのため、他企業との情報交換により、人的資源の不足を補う。

—(以上、引用)—

シリコン・バレーがこの数十年イノベーションを起こし続けているのも、この地域全体が「情報発見システム」そのものとして機能しているから、と考えると分かりやすいかもしれません。