先日、某所で行われたワイン会に参加しました。ブルゴーニュのものがメインでしたが、出された料理とのマッチングも十分に考慮されたもので、至福のひとときでした。
この時に、あるドメーヌ(フランス語で、「ブドウ畑を所有し自ら栽培・醸造・瓶詰めする生産者」のこと)の話が紹介されていました。
ここのご主人の信念は、「ぶどうの持っているポテンシャルをいかに上げるかが最も大切で、そのポテンシャル以上のものはワインに表現できない。だから、畑での作業をとても重視している、それも自ら自分達の手でやることがとても大切だと思っている」というものです。
実際、役所への報告書類を作成している奥様を見て、
「ペーパーワークをしているくらいだったら、早く畑へ出よう。書類からは何も価値は生まれないよ。畑しか価値を生まないんだから」
とおっしゃっているそうです。
これは、企業で働く我々にも気付きを与えてくれる言葉ですね。
企業の場合の価値は、お客様にどのような価値を提供できるか、に尽きます。
極端な話をすると、会計事務所や税理士のような場合は、ペーパーワークは重要なのではないでしょうか?また、コンサルティングの場合、お客様の現場と自分自身の経験を通じて得られた暗黙知を、いかに形式知に落とすかがカギで、この場合もペーパーワークを行う段階は重要です。
従って、この話は、全てのペーパーワークは否定すべき、と捉えるべきではないと思います。
この話は、自分がお客様に提供している価値が何なのかを常に意識し、本来その価値を生んでいる仕事と、その仕事から派生的に生まれている作業を分けて考えるべきである、ということを、我々に教えてくれているのだと思います。
ドメーヌの場合は畑から生まれるぶどう、知的プロフェッショナルの場合は経験を通じて得られた暗黙知がそれに該当するのでしょう。