デービッド・アーカー著・"Spanning Silos: The New CMO Imperative" (「サイロを橋渡しせよ 新しいCMOの規範」)を読了しました。
縦割り組織の弊害を打破するために、マーケティングが行うべき役割が具体的に書かれています。
前回、第二章までご紹介しました。
今回はその続きです。
サイロを橋渡しするための「クロス・サイロ・チーム」について第三章で紹介されています。
—(以下、p.74-88より引用)—–
サイロ組織の弊害を打破するために最もよく活用されるのは、「クロス・サイロ・チーム」だ。
もともとGMのCEOだったアルフレッド・スローンが中央集権排除のために事業部制を導入した際に、相乗効果・規模の経済・アイディア共有を図る上で「クロス・サイロ・チーム」が必要だったのだが、この必要性は100年近く経った今でも不変である。
クロス・サイロ・チームは、ブランド戦略確立の他に、サイロ組織間の相矛盾する利害を調整したり、解決すべき問題を特定する役割を持つ。
クロス・サイロ・チームを成功させるための要因は下記である。
1.ミッションを明確にすること
目的、数値化した目標、アプローチ方法について、お互いをお互いで補完しあえるようなメンバーにより構成されるチームであるべきである。
また、目的についてはあいまいさを排除し、明確にすることが必要である。
2.正しい人選
参加者のクオリティとタイプが、成功の出発点となる。「時間が空いているから」という理由でメンバーに任命すべきでない。自分が所属するサイロ組織について熟知し、仕事の能力、対人能力を持ち、自ら変革を起こす特性を持っていることが必要である。
また、チーム全体でオープンで「ギブ・アンド・テイク」の空気を育んでいくべきだ。他人の言うことをよく聞き、アイディアを育て、対立を建設的に受け入れ、グループ志向の目標を受け入れられることは、チームメンバーとしての重要な特性である。他人と協業し、チームのために努力する時間をコミットできる人が必要なのだ。
無関心だったりネガティブな人間が一人でもいると、グループ全体の努力を壊す可能性がある。
イノベーションの教祖であるトム・ケリーは、(議論の最中に)「では、ちょっとだけ『悪魔の代弁者』(注:あえてあら探しをする人)の役割をしてみようか」という言葉を挟んで自分の自尊心を満たそうとする人の破壊的な力について語っている。現実主義者であることはよいことである。しかしそれは常にネガティブであることではないのだ。
3.リーダーシップ能力
効果的なリーダーは、よいコミュニケーターであるとともに、権限委譲できる人だ。矛盾がある場合はメンバー間で隠さずに議論の遡上に乗せ、各メンバーにオーナーシップを持たせ、コミュニケーションの方法を定めることが必要だ。
4.複数の組織文化への対応
クロス・サイロ・チームは全く異なる組織文化の人間で構成されることがある。
マーケティングの人はエンジニアとモノゴトの見方が全く異なることが多い。また、マーケティングの中にセールスの人がいると宣伝やブランディングについて全く異なった見方をすることも多い。
これらの組織文化の違いは、コミュニケーションの解釈やチームへの参加意欲に多大なる影響を与えうるので、チームとリーダーは組織文化の違いによる現実について注意を払うべきである。
—-(以上、抜粋)—-
一つ一つの指摘は、実際に業務で経験したことと照らし合わせて考えると、「なるほど」と非常に納得できます。
会社の中では、複数部門をまたがったチームで仕事を進める場面が増えています。その際には上記の考え方は参考になるのではないでしょうか?
本書の最後に、CMOが最初の90日で行うべきこととして、二つ挙げています。
—-(p.197より抜粋)—-
最初に行うべきことは、サイロを橋渡しする組織の能力を評価することである。
二番目に行うべきことは、その対応策である。どのような活動と対応策を行うか、そして何よりもどのような優先順位で行うかである。
—-(以上、抜粋)—-
p.199とp.200、及びp.202-204に、これらのための具体的なチェックリストが掲載されていますが、これは大変に参考になります。
このようなチェックリストを見ると、この本に重厚な実用書という趣きを感じます。
机の上に置き、時々確認しながら実務で役立てたい本ですね。