電通では、4代目社長吉田秀雄が1951年に作られた「鬼十則」と呼ばれる言葉があります。
1. 仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
2. 仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
3. 大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
4. 難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
5. 取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
6. 周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
7. 計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
8. 自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。
9. 頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
10. 摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。
仕事のあるべき姿の真髄を突いた素晴らしい言葉です。電通が今日に至るまでトップ企業であるのも、納得ですね。
一方で、この「鬼十則」のパロディである「裏十則」というのもあります。電通に勤務されていた吉田望さんが作られたものだそうです。→詳しくはこちら
1. 仕事は自ら創るな。みんなでつぶされる。
2. 仕事は先手先手と働きかけていくな。疲れるだけだ。
3. 大きな仕事と取り組むな。大きな仕事は己に責任ばかりふりかかる。
4. 難しい仕事を狙うな。これを成し遂げようとしても誰も助けてくれない。
5. 取り組んだらすぐ放せ。馬鹿にされても放せ、火傷をする前に…。
6. 周囲を引きずり回すな。引きずっている間に、いつの間にか皆の鼻つまみ者になる。
7. 計画を持つな。長期の計画を持つと、怒りと苛立ちと、そして空しい失望と倦怠が生まれる。
8. 自信を持つな。自信を持つから君の仕事は煙たがられ嫌がられ、そしてついには誰からも相手にされなくなる。
9. 頭は常に全回転。八方に気を配って、一分の真実も語ってはならぬ。ゴマスリとはそのようなものだ。
10. 摩擦を恐れよ。摩擦はトラブルの母、減点の肥料だ。でないと君は築地のドンキホーテになる。
過去大きな成功を収めて安泰であり、ウチに閉じこもっている組織の場合、「同質性」を重視し、社員のほとんどが「裏十則」の行動原理に陥ってしまっていて、停滞していることが多いように思います。
『「一体感」が会社を潰す 異質と一流を排除する<子ども病>の正体』(秋山進著、PHPビジネス新書)で、こんな一文があります。
—(p.74-76より引用)—
….経営者にとってコドモの組織のほうが運営しやすく、経済的にも長い間合理的であったからなのです。…..1990年代前半にバブルが崩壊するまでは、市場自体が大きく成長していました。商品の差別化や高付加価値化が一部では叫ばれていましたが、基本的には独自の戦略を取ることよりも、当たり前のことを全員が息を合わせて一生懸命やることで会社も成長できたのです。………現代は、「多様性」が競争力の源泉になると言われていますが、ひと昔前までは、逆に「同質性」こそが競争力の源泉だったのです。
—(以上、引用)—-
現代では、同質性に陥り「裏十則」の原則で動いている「コドモ」の組織は、競争が激しい業界から順番に賞味期限が切れています。
それは多様性がない組織だと、競争と変化が激しい市場では敗れてしまい、市場から退場せざるをえなくなるからです。
そうならないためには、どうするか?
個人だけが変わってもダメ。マネジメントが一生懸命頑張っても限界があります。個人、組織、マネジメントが変わっていく必要があるのです。
本書では、個人、マネジメント、組織のそれぞれが、コドモから大人に変わるためにどうするべきかを提示しています。
「鬼十則」の組織は、一見厳しそうに見えます。しかし実際にこんな感じで仕事をすると、結構面白いものです。私はそのような組織の方と仕事をすることも多いのですが、皆さん楽しそうです。そしてそのような組織が成長して活気もあります。
じっくりと「鬼十則」と「裏十則」を見比べてみると、色々な発見があるかもしれません。