「PayPay100億円還元キャンペーン」、価格戦略的にどうなの?


今月、スマホ決済アプリを提供するPayPay(ペイペイ)が、同社アプリをスマホにダウンロードし、現金でなく同社アプリで商品を買うと、代金の2割を払い戻すという「100億円還元キャンペーン」を行いました。

たとえばアップルの新型MacBook Air 25万円をPayPayで購入すると、何と5万円も戻ってきます。しかも抽選で全額返ってくることも。

なんとも太っ腹なキャンペーン。100億円の還元金がなくなるまでキャンペーンを続けると発表しました。

結果、システム障害が起こるほどお客さんが殺到し、わずか10日間で還元キャンペーンは終了しました。

 

「なんで、その価格で売れちゃうの?」という価格戦略の本を出したばかりですが、価格戦略的にこのキャンペーンはどうなのでしょうか?

私は二つの点で、かなり秀逸なキャンペーンだと思います。

■まず「100億円の還元金が終われば終了」と条件を付けている点。値引きで怖いのは、値引き価格がお客さんにとって当たり前になることです。行動経済学的にいうと「値引き価格でアンカリングされる」ということです。しかし値引きなく条件付き還元キャンペーンなので、これが起こりません。

■190万人がアプリをダウンロードした点。日本のスマホ決済市場はまだ勝者がいない黎明期です。さらに決済サービスは、ユーザー数が多ければ多いほど儲かるので「規模の経済」が効きます。この市場立ち上がりの時期に一気に190万人獲得したことは、今後の決済サービスの戦いの上で、とても有利に働いてくるでしょう。

 

今後の課題は、今回アプリをインストールしてくれた190万人のユーザーに、今後も使い続けてもらうこと。100億円で190万人獲得ですから、1ユーザーあたり5,000円のお金を払って、アプリをインストールしてもらったことになります。この投資を生きた投資にする必要があります。

まず決済できる店を急拡大すること。今回獲得した190万という数字は、協力店を増やす上でとても大きな材料になってきます。

さらに他決済(現金や他決済アプリ)よりも高い使い勝手を提供し、ユーザーが高頻度に使いたくさせることも必要です。

 

PayPayはヤフーとソフトバンクの子会社です。

ヤフージャパン執行役員の小澤隆生さんによると、今回の戦略は孫さんも入ってヤフーとソフトバンクで徹底的に議論して決定したとのこと。

ソフトバンクは2000年頃にも街中でADSLモデムを無償配布する「パラソル部隊」を展開、立ち上がり始めたADSL通信市場を一気に押さえ、現在に至る通信ビジネスの足がかりを作りました。

戦略でとても大切なのは、このタイミング感と、的確に狙った目標へのピンポイントでの戦力集中です。

改めて価格戦略はビジネス戦略そのものだと実感します。

 

 

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