折衷案は、最悪


私は企業様の研修やワークショップで、グループワークをしていただくことがよくあります。
1チーム5〜6名で課題を討議していただき、チームで解決策をまとめていきます。
最近、ここでお願いしていることがあります。

「折衷案はやめましょう。首尾一貫したベストな解決策になるように、チームで考え抜いて下さい」

複数人で意見がわかれるとき、人はつい相手の面子を考え、複数の意見を取り込んだ折衷案を作りがちです。
しかしこれは最悪な方法です。

戦略の第一人者リチャード・P・ルメルトは著書「良い戦略、悪い戦略」で、ミニコンピュータ最大手だったDECの戦略会議に参加した経験を紹介しています。当時のDECは低迷中。対応策を話し合う幹部の意見は分かれました。

「今後も使い勝手のよい製品に集中すべきだ」
「それはすぐコモディティ化する。顧客の課題にソリューションを提供すべきだ」
「なんといっても半導体技術がカギだ。半導体チップに本腰を入れるべきだ」

3人とも譲りません。苛立ったCEOはこう言いました。

「何とか意見をまとめろ」

結果、こんな戦略がまとまりました。

「DECは高品質の製品およびサービスを提供するために努力し、データ処理で業界トップを目指す」

耳心地は悪くありませんが、何をするのかよくわからない戦略です。
低迷が続きCEOは更迭されました。

悪い戦略は問題を分析せず、思考をサボり、選択を怠った結果、生まれてきます。
特に私たち日本人は相手との対立を避けるため、ホドホドで折り合って妥協した折衷案を好みがちです。

折衷案の問題は、解決すべき問題が不明確なまま狙いがボヤけて、戦力を集中投下できず、何も生み出さないまま貴重な時間が過ぎ、徐々にじり貧になることです。

折衷案はやめることです。

①問題から逃げず、解決すべき課題が何かを見極める。
②その問題解決のためのシンプルな基本方針を決める。
③その基本方針に沿った、具体的な行動計画を決めて、実行する。

これを首尾一貫し、徹底することです。
1990年代前半にIBMを救ったガースナーは、まさにこれを徹底しました。

①当時「IBMは図体が大きすぎ。分社化すべし」という意見が圧倒的多数。しかしガースナーは「細分化が進むIT業界で、全分野に通じているのはむしろ強み。問題はそのスキルを活かしていないこと。むしろ統合化を進めるべし」と見極めました。
②そして「顧客向けにオーダーメイドのソリューションを提供する」という基本方針を明確にしました。
③さらに基本方針実現のために、サービス事業・ソフトウェア事業を立ち上げ、他社製品の取扱いも始めました。

折衷案はやめ、徹底的に問題を考え抜き、解決策を選び抜く。
首尾一貫して考え抜くことが、必要なのです。

 

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