なぜビジネスパーソンなのに、私は本を書くのか?改めて考えてみました #1000yencola


11月26日発売予定の「100円のコーラを1000円で売る方法」〔中経出版)は、私にとって5冊目の本になります。

2008年に初めて自費出版で出版した時はとても大変でしたが、最近はペースが上がり、今年1年間で3冊の本を出版しています。

一方で、ブログも2009年11月30日から毎日書き続け、もうすぐ丸二年。

改めて、なんで自分がこんなに本やブログを書くのか?

「結局好きだから」なのですが、もう少し深掘りして考えてみました。

 

私は昔から何か表現することが大好きでした。小学校で一番好きな科目は図工の時間。

大学に入って工学部に進みましたが、実際にはカメラをいつも持って写真ばかり撮っていました。30歳直前まで本気で写真家になろうと考えていました。

しかし、20代後半になって、プロの写真家の方々と知り合いになり、プロの現実、つまり食うのが大変で、しかも多忙で自分の写真が撮れていない人も多いことが分かりました。

ここで考えたのは、「自分は写真で自己表現をしたい」のであって、「写真で食いたい」のではない、ということ。

そして、30歳になった時には、生活の手段である仕事と、自己表現の写真を分けて考えるようになりました。

 

38歳になって、社会人大学院の多摩大学大学院に入りました。そこで、田坂広志先生と出会いました。2年間師事をし、修了後もご指導をいただきながら、分かったことは、「仕事もアートである」ということ。

ところで、アートとは何でしょうか?

林容子さんの著書「進化するアートマネージメント」によると、「欧米においてアートは個人の考えや個性を表現する重要な媒体であり、精神を解放し、自由にしていくもの」であり、「最近の傾向として、作品を商品化せず、真に自分の創作活動を行いたいがために、あえて一般の職業に就き、作品の創作・発表をする人が増えている」としています。

また、現代アーティストである村上隆さんの著書「芸術起業論」によると、「アートでは、文脈(=コンテキスト)の構築が重要」(つまり、この世の中での事象の中で、自分の芸術をどのように関連付けて考えるか、という論理構築力)としています。

 

このような経緯で、「仕事を通じ、ビジネスの枠組みの中で、自己表現していくビジネスパーソンこそ、アーティストそのものではないか?」と考えるようになりました。

それまで写真を通じてしか自己表現できない、と考えていたのですが、観点を変えると、仕事でも自己表現できるのですよね。

そしてコンテキストの構築をすることで、さらに自己表現を高めることができる。

改めて考えてみると、私にとってそのコンテキストを構築する作業が、本を書くことなのかな、と思います。つまり本を書くことで、私にとって仕事を通じて学んだことを体系化し、自分なりの解釈で自己表現しているのです。

もちろん本には「読者」という顧客がいます。だから、「自己表現」とは言っても、読者が満足することが大前提。しかしそれは、アートの世界でも同じことですね。

 

ところで私の場合、自分が持っているマーケティングの知識の95%は、仕事で学んだこと(+学んだことの本による裏付け)です。教室などの座学で学んだことは、おそらく5%程度です。会社の仕事でしか学べないことって、多いのですよね。

実際、どんなにいい会社であっても、仕事で矛盾に出会うことは非常に多いのです。私たちビジネスパーソンは、この矛盾にどのように向き合うかが、日々問われている訳です。

このような矛盾に直面して悩んで怒り、会社が終わって飲みに行って、仲間内で愚痴るのも、確かにアリかもしれません。

しかし一方で、そのような矛盾から学ぶことも多いはず。

それならば、いっそのこと、その矛盾に対する怒りを昇華し、客観視して解決策を考え、学びとして社会に発信してみる。つまり、エゴを小さくまとめず、大きくして社会に拡げる。

これって、現場で悪戦苦闘しているビジネスパーソンしかできないことなのですよね。仕事の現場にいない大学の先生やジャーナリストは体験できないことです。

そして、このような経験を、コンテキストを構築して表現してみる。

私の場合、この作業が本の執筆なのだと思います。

 

間もなく出版する「100円のコーラを1000円で売る方法」も、会社員として長年仕事をしてきて、感じていた矛盾について書きました。

それは「顧客中心主義」と「顧客絶対主義」の違いです。似ているようで、実は両者は全く違います。

古き良き時代を知っている先輩から「いいか、お客さんの言うことには、絶対『ノー』と言っちゃだめだぞ」と言われて、違和感と葛藤を感じた方もおられるのではないでしょうか?

その葛藤が、本書のテーマです。

おそらく、私が会社勤めだからこそ、現場の経験や学びをマーケティング理論に当てはめて消化できた部分も多かったのではないか、と思います。

 

このように考えると、今回の本も、私にとって、写真展や演奏会などと同様、大切な自己表現の一つなのかもしれません。

発売は11月26日。あと10日です。

 

 

 

2011-11-16 | カテゴリー : 商業出版 | 投稿者 : takahisanagaicom