一般的に企画は次のステップで立てていきます。
⓪目的を受けて
①色々な情報を集めて、
②現在の状況を把握し、
③考察を重ねて、
④対応を考え、
⑤企画する
しかし世の中はすごい勢いで変化してます。情報も膨大で全ての状況を把握するのは困難です。
1週間かけて調べても情報を把握しきれないことも多いですし、そのような情報を分析するのも大変です。もちろんこのような分析は価値があるものですが、全てのケースでこのような手間をかけられないことも多いのです。さらに実施段階で状況も変わっていたりします。
では、どうするか?
ボストンコンサルティングで日本代表も務められた、早稲田大学の内田和成教授は、『仮説思考』という本で、「実験をする前に論文を書く」という化学研究者の例を紹介されています。
「実験をする前に論文を書く」
通に考えるとあり得ない発想ですが、最初に実験結果の仮説を立てて論文を書いた上で、実験を行い、もし差異が出たらその理由を検証することで、この化学者は大きな成果を上げています。
通常は分析結果をベースに結論を組み立てるべき、と考えがちですが、これだと答えもストーリーもなかなか見えてこないのです。
あらゆる状況を把握し、その分析結果をベースに組み立てるのが「網羅思考」
一方で、間違ってもいいから仮説を立てて、検証をするのが「仮説思考」
私はよく企画を立てるのが速いといわれます。それは私が企画を立てる優秀な頭脳を持っているからではありません。(たぶん頭脳は普通だと思います)
その理由は、「間違ってもいい」という前提でとりあえず仮説を30分で立てて、その仮説を状況が分かっている関係者にマメに確認し、頻繁に修正する、という方法で企画しているからです。
企画を完成した時点で最初の仮説を振り返ると、かなり稚拙な内容であることが多いのですが、これでいいのです。
英語で議論のためのたたき台を"strawman proposal"と呼ぶことがあります。「わら人形」という意味ですが、みんなで叩くために、とりあえずその議論のベースとなる「たたき台」(=仮説)を作ることが、いい企画を短時間で作るために必要なのだと思います。
この「たたき台=わら人形」をどう作るべきなのかに議論の時間を費やしているケースが多いように思いますが、たたき台はあくまでもたたき台なので、「間違ってもいい」という前提で、サクッと作ることが必要なのでしょうね。
詳細な分析を元に1週間かけて最初の企画を作るよりも、間違ってもいいので30分でたたき台を作って関係者が集まって1時間の議論を数回行い、2日でとりあえず企画を試行してみる方が、自分の経験でもいい結果が出ることが多いと思います。
「網羅思考」に陥ると、時間と手間とワークロードだけがかかって成果が生まれない、という悪循環に陥りがちです。日本では特にこの状況がよく見られるように思います。
そのためには完璧主義を脱して、間違ってもいいという前提で作られた「たたき台=わら人形」を、社会やビジネスの世界で許容することも必要なのでしょうね。
仮説を確かめるところは「仮設工事」となってはいけない
永井さんのこちらのエントリで仮説思考の大切さが非常にわかりやすく紹介されています