完璧と思える素晴らしい戦略を策定するのは、時として時間がかかります。
一方で戦略の詰めは甘いものの、とりあえず見切り発車で始めるケースもあります。
どちらで進めるか、悩む方もおられるのではないでしょうか?
「メイドインジャパン 逆襲のシナリオ」(NHK取材班、宝島社)で、ダイキンの井上会長が次のように語っておられます。
—(以下、p.218から引用)—
私自身、戦略を立案して役員会で決めて「さあ実行」というときには、もうその戦略が古くなっていたという失敗を何回も経験しています。ですから「一流の戦略と二流の実行力」、あるいは「二流の戦略と一流の実行力」のどちらかを選ぶとすれば、私は迷わず後者を取ります。……100%を求めていたらスピードもタイミングも逸してしまいます。六分の理があれば、勇気ある決断によってまず実行に入る。
—(以上、引用)—
かつてビジネスを立ち上げる際に必ず必要だったのは、「ヒト・モノ・カネ」。
私も若い頃に「あれをやればいい」「これに挑戦したらいい」と上司や先輩に色々なアイデアを提案して、「お前、そうは言っても『ヒト・モノ・カネ』はどうするんだ」とたしなめられたことがよくありました。
しかし現代では、小資本でも立ち上げられるようになりました。
むしろタイミングを逸してしまう方が、はるかに怖いことなのですよね。
見方を変えると、色々と挑戦したい人にとっては挑戦しやすい時代になりました。
私自身も様々な企画で、タイミングを逸してしまうことを数多く経験しました。
そしてタイミングを逸すると、その後「ヒト・モノ・カネ」をつぎ込んでも、なかなか挽回できません。
現代では、「時間」は、「ヒト・モノ・カネ・情報」に続く第5の経営資源です。しかし、その重要性は他の4つよりも、大きいことが多いのです。
もちろん、「一流の戦略」と「一流の実行力」で、すぐに始められれば、ベスト。
一方で現代では、情報や時間が足りず、戦略に十分に時間をかけられないことが多いのも、現実です。
「見切り発車の戦略」で足りない部分を自覚しつつ、タイミングを逸しない実行力を発揮することが、大切な時代だと思います。