企業買収や合併が増えてきました。
規模の追求を狙い、二社合併を発表するケースもあります。
企業買収や企業統合はどのように考えればよいのでしょうか?
そのことを考える上で、週刊東洋経済 2015/3/21号に掲載された「ファミマ、ユニー統合で始まる コンビニ大淘汰」という特集は、買収や合併による効果、イノベーションの追求などを考える上で、とても示唆に富む内容でした。
本記事に2001年のサークルKとサンクスの合併について考察している箇所がありますので、引用します。
—(以下、引用)—
もっとも、今まで違う歴史をたどってきた企業が一緒になったうえで、重複する部分を合理化し、かつ相乗効果を生み出すことは容易でない。くしくもサークルKサンクスの 現実がそれを物語っている。
……並んでいる商品やサービスは一緒なのだが、消費者からは違う店に見えるという、何とも不思議な状態だ
サークルKサンクスはその理由を「それぞれのブランドに顧客が付いている」などと説明してきた。こうした姿勢に業を煮やし、ライバル社 に移ったエリアFC(フランチャイ ズ)会社幹部は「商品や販促、オーナーへの支援、いずれも劣る。どういうコンビニを目指すか見えてこなかった」と憤る。
—(以上、引用)—
確かに海外や異分野などの新市場に進出するために買収・企業統合を行い、成功しているケースは多くあります。
一方で競合が激しい同一市場内で規模の追求を狙って買収・合併しても、その効果が不十分な事例は、世の中に少なくありません。
この章の「負け組同士、統合の正否」という辛口タイトルに象徴されるように、企業文化が異なる2社を融合しようとしても、それぞれの「組織の論理」が邪魔をしてしまいがちです。
その結果、本来はイノベーションに裂くべき企業の体力が、企業統合というイノベーションを生み出さない作業に費やされます。
そしてその間にライバルのトップランナーは、新しい分野で着々と仮説検証を繰り返し、イノベーションを進めています。
ちょうど、チームによる競走レースをイメージするとわかりやすいかも知れません。
先頭チーム(セブン)は、順調に走っています。
追いかける後続チーム(ファミマとユニー)はなかなか追いつけません。そこで複数の後続チーム同士で一体化することで体力増強を図り、キャッチアップを目指します。
一体化するためには、立ち止まって服を着替えたり靴を履き替えたりマシンの調整をしたりする必要があります。
しかしこの時間は完全にロスタイム。その間に先頭チームはどんどん先に進み、タイムは開くばかりです。
ロスタイムを挽回するためには、統合した後に先頭チームを上回る速度で追いかける必要があります。
もし統合後に速度が遅くなると、さらに差が開くばかりです。
このように考えると、施策も見えてきます。
まず統合のロスタイムを考慮しても、一体化することによる統合化メリットを、数字で把握すること。
両社合計の売上高や店舗数だけで評価すると、どんな統合でも数字は増えます。これだけで判断すると、あらゆる統合ケースで「統合=正しい」になりますよね。統合による価値の本質を見失いがちです。
たとえばこのケースでは、店舗当たりの1日の売上(ファミマ52万円、ユニー43万円)が、統合することで向上し、セブン(66万円)にキャッチアップできるかどうかというのも、一つの指標になり得ます。
統合化メリットが生まれるシナリオが作れるのであれば、一体化するメリットが出てきます。
もう一つは、そのシナリオを確定した上で、早期にそのシナリオを実現するために、統合化のロスタイム最小化を図ること。
統合化自体は、顧客に対して新たな価値を生み出す作業ではありません。たとえば統合するとユニーでもファミマの新商品を売ることができます。しかし顧客からすると、統合しなくてもファミマに行けば商品は買えるわけで、顧客にとって大きな価値があるとは言えません。
競走で着替える時間はカウントされるのに距離はまったく進まないのと同じことです。
だからこそ、企業統合はできるだけスムーズに速く進めることが必要です。
合併は結婚のようなもの。結婚同様に、事前にお互いに一つ屋根の下で一緒に暮らしていけるのか、相性を見極めることが大切です。
また、放っておいて現場で自然に二つの会社が融和することもありません。
さらに2社間でどちらの会社に寄せて統合するのか、あるいは藤森さんが率いるリクシルのように全て壊して一から作り直すのか、リーダーシップを明確にすることも大切です。
統合化のメリットが、統合化のロスタイムによる損失を上回るのであれば、統合は意味があるものになります。
ファミマはかつてam/pmを統合した経験もあります。
ファミマとユニーの統合が成功し、コンビニ業界が活性化して、消費者の利便性がさらに向上するようなイノベーションが生み出されるように願っています。