「余計な仕事」が、社員全体のやる気を下げている。では「余計な仕事」はどうして生まれるのか?


経営者や管理職とお話しして実感するのは、「社員のやる気をどうすれば上げられるか?」といつも考えている方がとても多いこと。

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これについて、考えるヒントがありました。

ハーバードビジネスレビュー2015年2月号に、LINE代表取締役社長CEO(当時)の森川亮さんへの「会社の成長に計画は不要である」というインタビューが掲載されています。

—(以下、引用)—

[編集部] ヒット商品を生むには組織の活性化が必要で、それには社員のモチベーションを上げることが重要だといわれます。これについてどうお考えですか?

企業はプロフェッショナルを採用しているわけですから会社にモチベーションを上げてもらわなければならないような人はプロとして失格です。これは社会全体が幼稚化していると思うのですが、みずから学ぼう、みずから何かを起こそうという気持ちのない人は、新しいものを生み出せないと思います。そういう気のある人が喧々諤々の議論をしながらいいものを世に送り出すのが本来の姿です。

—(以上、引用)—

 

このような意見に対して、「LINEのような企業だから、プロフェッショナルを採用できるのだろう」という意見も聞かれます。

中小企業は確かに厳しい採用環境ですので、その通りなのかもしれません。

しかし本来は人材を見極めて採用しているはずの大企業でも、同じ意見を聞くことがあります。

これは、いい人材を採用しても、社内で人材をスポイルしてしまっている、ということの裏返しです。

 

この点に関しても、大企業に勤務された経験がある森川さんは、次のようにおっしゃっています。

—(以下、引用)—

大企業の人から、マネージャー・クラスの人が疲れているという話を耳にします。部下の教育や評価もしなければならないし、決算もしなければならないし、リポートも書かなければならない。しかも一日中会議だらけで、家に持ち帰って仕事をしなければとても追いつかないというのです。これは優秀な人の使い方を誤っていると思います。

……

いい成果を生み出すためには、優秀な人が余計なことに惑わされず、速いスピードで動ける環境が大事なのです。しかしいま申し上げた大企業のやり方では、優秀な人ほど余計な仕事が増え、面倒を見なければならないモチベーションが低い部下を抱えさせられてしまう仕組みです。やがて疲れ切って諦めてしまうのは、当然のことでしょう。

—(以上、引用)—

「『余計な仕事』が、社員全体のやる気を下げている」ということですね。

私も大企業で30年間仕事をしていましたので、おっしゃっていることはよくわかります。

 

社内の「余計な仕事」は、主管部門が責任者の承認を得て一旦ルールを決めると、「社員がやらなければならない仕事」となることが多いのです。

やっかいなのは、この「余計な仕事」を作り出している人たち自身が、「余計な仕事を作っている」という自覚はほとんどない点。むしろ「これは必要な仕事」と信じ込んでいることも多いのです。

しかし実際に突っ込んで話し合うと、「その仕事でどのような成果(価値)を生み出そうとしているのか」、「その『成果を生み出す』とする根拠は何か」が希薄な場合も多いのです。

実際には、社内で作られる新たな仕事は「余計な仕事」であることが少なくなく、そのような「余計な仕事」が積み重なると社員のモチベーションが下がってしまうのです。

 

社内で新たな仕事を作ろうとする場合、「どのような価値を創ろうとしているのか?」「その根拠は何か?」「本当に『余計な仕事』ではないのか?」を、改めて考え抜く必要があります。

 

「バリュープロポジション」を考え抜く大切さは、社内業務であってもまったく同じなのです。