昨日のブログの続きです。本日はエアウィーヴの初期の取り組みを深掘りしたいと思います。
約2年前の2013年7月、名古屋の第一線で活躍しておられるキーパーソンを紹介しているナゴヤラジオで、エアウィーヴの高岡本州社長(当時)がインタビューを受けておられます。
その全7話をネットで聞くことができます。→リンク
合計1時間に及ぶインタビューはとても貴重なお話しで、とても参考になりました。そこでメモを取った内容をまとめてみたいと思います。(詳しく知りたい方は、リンク先のインタビューをお聴き下さい)
—(以下、引用)—-
もとは叔父から引き継いだ事業で、プラスティックスを溶かして細い糸状にする射出成形の機械を作っていた。プラスティックスの糸が絡まり面白いクッション性があるものが出来た。
2004年頃、機械製造から素材製造へのシフトを図っている段階で引き継いだ。
当初、2004年から2年間はソファなど緩衝材・衝撃吸収材のクッション材の製造をB2Bで売っていた。しかし素材製造だけでは事業が成り立たず、2年間は赤字だった。
—(以上、引用)—
高岡社長が引き継いだ2004年の時点で、既に既存事業が行き詰まっていて事業転換を考えており、「クッション性のあるプラスティックス素材」という「自社の強み」(=コア技術)を活かして何かできないか、2年間模索し始めていたことがわかります。
まず、「機械製造→素材製造」の転換の模索を図っていたのですね。
しかし2004年からの2年間は、用途が絞れず赤字が続きました。
そこで高岡社長はこのように考えました。
—(以下、引用)—-
B2B向けにベット用の素材を提供していたので、寝具用の素材としては可能性があると思っていた。そこでマットレスやベットマットを作ってみた。
B2B向けのクッション材の製造から、B2C向けのマットレスに切り替えた理由は、B2Bだけでは消費者の声が聞こえないからだ。ユーザーの声を聞かなければ製品開発はできないし、技術は発展しない、と考えた。
—(以上、引用)—
ここでもう1つの転換、「B2B(企業)顧客→B2C(消費者)顧客」への転換を模索し始めました。そのヒントは、メーカー向けへのベット用素材提供で可能性を把握し、実際の消費者の声を把握する必要性を認識したことです。
つまりエアウィーヴは最初の2年間で、事業の転換(機械製造→素材製造)と、ターゲット顧客の転換(B2B→B2C)と、2段階の転換を図っていることがわかります。
そして、高岡社長は、新たにB2C向けにどのように取り組むかを考え始めます。
—(以下、引用)—-
当初ベット用マットレスで売ることを考えたが、そのためには、顧客からベット用マットレスを回収しなければならない。マットレスの場合は大きな在庫スペースがいるし配送も必要だ。つまり事業参入には大きな資本と手間を要するし、大変なので、これは止めた。
一方で、寝具市場ではベッドパット市場が伸びていた。当時、売れていたベットパット商品は、ウレタンの低反発のものだった。顧客は寝具を手触りで選ぶ傾向がある。ウレタンは低反発は感触はいい。しかし実際に寝てみると、ウレタンは空気を通さないので通気性が悪く臭いも残る。さらに低反発なので寝返りがきつい。
そこで当社の素材を使ってベットパットを試作してみたところ、好評だった。2006年頃、「ベットパットに絞れば行けるかもしれない」と考えた。
そこで既存ビジネスは採算に乗らないので、全部中止。2006-2007年にかけてベットパットに集中した。
知り合いに体験してもらったら、いい評判だった。「絶対売れる」と思った。
そして2007年6月にベットパッドを販売し始めた。
—(以上、引用)—
素材の強みを活かしてB2C市場に取り組むことを決めた後、このように「ターゲット顧客」「課題」「解決策」を絞り込んで、ベットパット市場への挑戦が始まりました。
ちなみにベットパットとはこんな商品です。(ポータブルタイプの商品を、エアウィーヴのサイトから引用しています)
では、販売を開始した結果、どうだったのでしょうか?
—(以下、引用)—-
東京の展示会に出展、同じ日にウェブや広告を出し、電話が殺到すると考えてコールセンターも用意した。
万全の体制で臨んだが、実際には2日間でかかってきた電話は1本。1ヶ月で売れたのは2枚。今でこそ1日で1,000枚売れているが、1年目は1年間で180枚しか売れなかった。
1年目は雑誌広告も出した。存在を知ってもらうために、女性をターゲットに「快適な睡眠で美容」を訴求した。しかし全然届かない。
調べてみると、寝具の購買行動は通常の商品とは異なるということがわかった。
寝具は頻繁に買う商品ではない。「何となく買う」商品でもない。引っ越し、結婚、進学など、買うタイミングが決まっている目的買いの商品だ。必要な時には必ず買いに来るが、必要がなければまず買わない。だからデパートなどでも、高い階に店がある。客は店まで一直線に来るからだ。
言い換えれば、購買するためのハードルは、とても高い。
だから寝具の場合は、売場の売り場面積をどれだけ確保するかが重要になる。そして選ぶ基準は、価格帯とブランド。新たな商品メーカーが出て売れるものではなかった。
この1年間で寝具の市場を学んだ。そしてこんな時期が3年間続いた。
—(以上、引用)—
昨日のブログで、 「4000万円投資して1000万円しか売れなかった」と書きました。
その時に起こった内容を、高岡社長は詳しくお話ししておられます。
まさに「4000万円かけて、自社しか得られない学びを得た」のですね。
「ターゲット顧客」「課題」「解決策」を絞り込んで仮説を立てて、その仮説を検証した結果、エアウィーヴの挑戦はさらに進化していきます。
この続きは、次回のブログでご紹介します。
【ブログ連載】6年で売上100倍→120億円!驚異のメーカー・エアウィーヴ
(2) 200枚の試作品は大好評。そして初年度4000万円を投入。しかし売れたのは1000万円