先週12月3日に出演した文化放送オトナカレッジでは、「柳の下にドジョウは2匹いるのか?」と題して、お話ししました。
ポイントをまとめると、
■1980年代くらいまでは、模倣戦略は有効だった
■しかし今、この戦略はうまくいかない。たとえばルンバは2002年に販売開始したが、2014年時点で日本国内シェアは66%。残り34%は他メーカー10社が分け合っている
■模倣戦略がうまくいかない理由は2つある
■1つは、商品寿命が短くなっている。1970年代と比べて1/10程度になっている
■2つは、模倣しても劣化版コピーにしかならない。時間が少ないので模倣が不十分になり、差別化しようとしてもそれが顧客が買う理由に繋がらない
■だから、「模倣戦略は失敗の王道」なのである
しかし実は、模倣戦略が有効な場合もあるのです。事例を2つご紹介します。
【事例1:AltaVistaとGoogle】
実はネット全文検索を初めて実現して世の中で話題になったのは、Googleではなく、AltaVistaというサービスでした。 1995年の当時、私はAltaVistaを使ってみて、「おお、凄い!こういうことができるんだ!」と驚いたことをよく覚えています。
このAltaVistaは、コンピューターメーカーのDECが開発したAlphaサーバーの高性能をデモするために、インターネット上のあらゆるページをインデックス化することにより作ったサービスでした。(ちなみに後にCompaqがこのDECを買収。そのCompaqもHPにより買収されました)
一方でスタンフォード大学の博士課程だったセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジがGoogleの原型を開発したのは、翌年の1996年。そしてGoogle創業は1998年。実はGoogleは後発だったのです。
では、なぜ後発なのにGoogleは残り、AltaVistaは負けたのでしょうか?
AltaVistaはDECがAlphaの性能をデモすることが目的だったので、機能は十分ではありませんでした。たとえば検索結果の精度は徐々に悪化していきました。一方で後発のGoogleはネット検索専業として技術を磨いて検索精度を向上させ、追い越したのです。
【事例2:ウォークマンとiPod】
携帯音楽プレイヤーで先行したのは言うまでもなくソニーのウォークマン。しかしデジタル音楽が普及した2001年に登場したAppleのiPodは、単にデジタル音楽機器として提供されただけでなくデジタル音楽を配信するインフラiTunesも用意しました。一方のソニーは従来型の音楽著作権のしがらみから抜けられず、iTunesのような仕組みは作れませんでした。
その結果Appleは、ソニーがデジタル音楽を配信するインフラを作れないジレンマを抱えて停滞している間隙を縫って、デジタル音楽の勝者になりました。
このように考えると、どのような場合に模倣戦略が有効かがわかります。
それは、先行企業が色々な理由により技術を磨かけずに、進化が停滞した場合です。
「商品寿命が短い」ということは、時間がますます希少な資源になっているということです。進化を怠ると、あっという間に後発企業に追いつかれます。
先行企業と言えども、油断をすると、後発企業に模倣されて抜かれてしまうのです。ビジネスがまさに「競走」であることを考えると、当たり前のことですね。
逆に言えば先行企業は、常に技術を磨き続けて顧客の課題を解決し続けることが、勝利の鉄則なのです。
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