3年前、北海道・帯広市にお招きをいただき、講演をした時、こんな話を聞きました。
「実は、帯広では真冬にマンゴーを1玉2万円で出荷しています」
最初に思ったのは、(なんで真冬に、帯広でマンゴー?しかも1玉2万円?)
北海道・帯広がある十勝地方と言えば、まさに厳寒の地です。
そもそもこんな場所で、どうしてマンゴーを、真冬に作っているのか?そして高く売れるのか?
しかも自然エネルギーだけで栽培しているそうです。
不思議ですよね。
日本国内のマンゴーの主産地は、宮崎です。九州の温暖な気候の中で、春から夏にかけて収穫されます。
一方でマンゴーは、年末年始の贈答用としても高い需要がありました。この時期はクリスマス需要も見込めます。
しかし九州とは言え真冬は当然ながら寒いわけで、マンゴーを栽培するのは難しかったのです。
「マンゴーを12月に出荷できないか?」
そこで宮崎のマンゴー農家と、帯広で事業を展開するノラワークスジャパンという会社が、協業を始めました。
2010年11月に宮崎県から成木を移植して栽培を開始。2011年5月には20個を収穫、十勝でもマンゴーが実ることを確認しました。
しかしマンゴーを冬に収穫するためには、マンゴーに6ー7月が冬で、12月が夏だと錯覚させる必要があります。そこで大型ハウス栽培に挑戦しました。
しかし石油や電気エネルギーを使って大型ハウスを暖房・冷房していては、お金もかかります。地球にも優しくありません。では、どうするか?
そこには逆転の発想があったのです。
十勝地方の冬、大雪が積もります。
そこで夏場は、木屑をかけて保存した雪山から、大型ハウス地下にパイプを通して水を循環させ、真夏の地水の温度を下げるようにしました。これでマンゴーは真夏を「南国の冬」と錯覚します。
また十勝地方には、「美人の湯」として知られる十勝温泉があります。
そこで冬場は、この温泉水を循環させて、冬場でもハウスを30度以上の温度を保つようにしました。これでマンゴーは、冬場を「南国の夏」と錯覚します。加えてミネラル豊富なこの温泉水は、マンゴーの木にも与えられています。
さらに十勝地方は年間平均日照時間が2033.2時間。これは北海道内ではトップクラス。日本国内でも、宮崎市や高知市、和歌山市といった日照時間が長い地域と比べて遜色がありません。冬も晴天が続きます。このおかげでマンゴーも完熟します。
実は帯広・十勝は食糧自給率は1100%。わが国有数の食料生産基地なのも、この国内有数の日照時間のおかげなのです。
このおかげで、日本一の糖度15度超、さらに繊維質も少なくとろける味わいのマンゴー生産に成功しました。
十勝で生まれたマンゴーは、「白銀の太陽」と名付けられています。
十勝マンゴーは、「マンゴーはシーズンもの」という従来の常識を覆して「クリスマスに美味しいマンゴーを届ける」というイノベーションを実現し、「年末年始の贈答」「クリスマス需要」という「お客様が買う理由」を創りあげ、新たな顧客を創造したのです。
【参考リンク】
■十勝マンゴー、冬取り成功(十勝毎日新聞社ニュース)