「永井さんが言っていた『お客様が買う理由』、自分なりに考え抜きました」
その方は一枚の紙を持ってきました。
「お墨付きをいただいたら、会社に戻って、ヒトモノカネを投入してすぐに全社展開します」
「自分の会社をもっと良くしたい」という誠実で真摯な想いがヒシヒシと伝わってきます。ただ、この方法だと、必ずしもうまくいくとは限らないのです。
「お客様が買う理由」は、次のように考えていきます。
・自分たちの強みが、何なのか?
・その強みを必要とするお客様が、本当に存在するのか?
・そのお客様が、本当にその強みで解決できる課題を持っているのか?
・そしてそのお客様が、その解決策で本当に我々を選んでくださるのか?
これを考え抜いたのは素晴らしいことです。
しかし仮に実績豊富で超優秀なコンサルタントがいて、お墨付きを出したしても、必ずしもうまくいくとは限らないのです。「お客様が買う理由」は、あくまでも仮説。その仮説が正しいかどうかを決めるのは、リアルなお客様だけだからです。
特に変化が激しい時代は、ほんの短い期間で顧客ニーズが激変することもあります。ですからこの仮説が本当に正しいのか、リアルなお客様で検証し続けることが必要なのです。
ほとんどの場合、仮説通りには進みません。修正に次ぐ修正が必要です。
うまくいかない時、「まったくダメだ。ゼロからやり直しだ」と考え勝ちですが、ここで大切なのは、ゼロから考えるのではなく、当初の仮説に一度立ち返り、どこが悪かったのかを考えること。
・自分たちの強みの定義が間違っていたのか?
・ターゲットのお客様の設定が間違ったのか?あるいは絞り込みすぎているのか?
・想定していたお客様の課題把握が間違っていたのか?
・課題把握は正しいが、解決策が適切ではないのか?
「お客様が買う理由」は、一見シンプルに見えるので、ともすると簡単に作れそうに思えます。しかし完成させるためには、リアルなお客様に対して、上記の試行錯誤の繰り返しが必要なのです。そしてうまい組み合わせが見つかっても安心できません。時代とともに、賞味期限が切れるからです。変化対応が常に必要なのです。
このように考えると、冒頭のやり取りで何が問題なのかがわかるのでないでしょうか?
「お客様が買う理由」が正しいかどうかを決めるのは、お客様だけです。
そしてその答えを見つけて検証するのは、その事業のことが一番よくわかっている自分自身です。どこかにいる第三者ではありません。
私は、その答えを見つけようとする人たちと同じ道を一緒になって歩いて答えを見つけ、そしてその後は、その人たちが独力で歩けるようにご支援したいと考えています。そこで弊社ではこれを企業のお客様に半年間の新規事業開発実習としてご提供しています。
「リアルなお客様の反応」という事実に対して、私たちは常に謙虚でありたいものです。
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