チャンスは、雨のように降っている


 

私は講演や著書では、成功事例をもとに「お客様が買う理由」をいかに作るかをご説明しています。すると時々、こんな質問をいただくことがあります。

「それって、たまたま運がよかったんじゃないですか?」

さて、本当に彼らは運がよかっただけなのでしょうか?

 

こんな研究があります。

ある大学の先生が、日本経済新聞「私の履歴書」を執筆した創業者や起業家を題材に、偶然起きた出来事がどのようにキャリア成功に役だったかを分析しました。→参考リンク

この研究では、次のような事例が紹介されています。

■「意外なところから大型商談が舞い込んだ。東京オリンピックの警備だ。リスクが高かったが何とかなると考えて引き受け、大変な思いでプロジェクト完了。その後一気に伸びた」(セコム、飯田亮氏)

■「三菱重工から非常に短納期の大量注文が舞い込んだ。受けないだろうと踏んで『契約の2倍なら』というと、『それで結構』。あわてて人材を確保、約束の期限に仕上げた。これで信用が付き、ビジネスが一気に拡大した」(大和ハウス工業、石橋信夫氏)

■「若手時代、地道に研究を続けたが、突然破局がやってきた。新任技術部長が『キミには無理。他の者にやらせる』と引導を渡された。そこで会社を退社。『自分で会社を作るか』というと部下達が口々に『付いてくる』。これが今の会社になった」(京セラ、稲盛和夫氏)

■「代理店を作ろうと思ったら、保証金が予算の10倍。『とても無理』とあきらめた。チャンスはどこにころがっているかわからない。帰ろうとしたら、先方の社長が『会いたい』。保証金は予算の1/10でいいので大阪で代理店をやって欲しいとのこと。大阪には縁もゆかりもなかったが、回ってみると商売のチャンスは大きく、得意先は次第に増えていった」(岩谷産業、岩谷直治氏)

■「工場勤めで高度な技術がついたが、学歴がないので役職に就けない。しかし思いがけぬところから幸運が舞い込んだ。自宅近所の会社の社長が『自営をしてみないか?うちの工場で技術指導してくれれば仕事も材料も回すよ』 私が独立を志していることは社長も知っていた。こうして独立がかなった」(カシオ計算機、樫尾忠雄氏)

■「女性用下着の商売がやっと軌道に乗り始めてきたら、下着業界に”黒船”がやってきた。米国の下着メーカーが2社上陸し、提携先を探し始めたのだ。条件は厳しかったが、断れば他業者と提携するかもしれないので、授業料と割り切って条件を飲み、この2社と提携。その後、1社は契約違反、もう1社は日本人の体型にあわず売れ行き不振で撤退。そのうち当社は東京進出を果たし、国内の地位を固めた」(ワコール、塚本幸一氏)

 

この論文にはありませんが、最初ピアニストを目指していた小澤征爾さんも、ラクビーで指を骨折してピアノを断念せざるを得ず、指揮者に転向して大成功を収められました。

 

さて、彼らは運が強かったのでしょうか?
確かにそれもあるでしょう。
しかしこのようなチャンスが成功した人だけにもたらされたのか、というと、ちょっと違うように思います。

 

おそらくチャンスは、雨粒のように、すべての人に平等に降り注いでいます。この雨粒が、見えている人と、見えていない人がいるのです。この雨粒が見えている人は、チャンスをつかみ取り、成功し、その結果「あいつは運がいい」と言われるのです。

では、そのためにはどうすればよいのでしょうか?

 

まず、問題意識を持つこと。

「このままじゃダメ」「何とか今の状況を変えたい」という危機意識。
あるいは「これをどうしてもやりたい」という好奇心。

何らかの問題意識を持つことです。

たとえば読書で、ただ本を読む場合と、問題意識を持って本を読む場合。
後者の方が得られる知識が格段に大きいことを経験したことがあると思います。

まず「現状をどうにか変えたい」という問題意識を持つこと。
そうすれば、それまで見えなかった雨粒が、少しだけ見えてきます。

 

問題意識を持ったら、次に具体的な行動に移すことです。

たとえば、何か解決したい問題があるなら、解決策を探すためにまず人に会ってみる。
あるいは「本を書きたい」と思ったら、思うだけでなく1行だけでもまず書いてみる。

具体的な行動に移すことで、雨粒がさらに見えてきます。
行動することで、経験やスキルが溜まっていきます。

 

そして人との繋がり、ご縁も拡がっていきます。
行動とご縁が、さらに雨粒をチャンスに変えていきます。

パスツールも「チャンスは、それを迎える準備が出来ている人に訪れる」と語っています。

 

そして大きなチャンスは、上記で紹介したように、一見あたかも大きなピンチの形で訪れます。
しかし準備することで、ピンチをチャンスに変えられるのです。

 

問題意識と行動が、人とのご縁につながり、運をたぐり寄せ、成功に繋がっていくのです。

 

 

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