QBハウスが値上げを発表しました。2019年2月から、こうなります。
通常価格 1,080円→1,200円
シニア価格 1,000円→1,100円
理容業界で価格破壊を起こしたQBハウス。一見すると、その売りである「安さ」を手放す値上げのようにも見えます。実際のところ、どうなのでしょうか。そしてお客さんは離れるのでしょうか?残るのでしょうか?
SNSの反応を見てみると…。
「まぁ、仕方ないよね」
「値上げしても行きます」
という意見が意外と多い中…
「競合店にお客さんが流れるのでは?」
という意見もあります。
実は私もQBハウスを使っています。
理由は「安さ」ではなく、「速いから」。普通の散髪だと、カット・洗髪で1時間、待たされたりして1時間。下手すると半日潰れます。QBハウスなら隙間時間でカットできます。
そして価格の割にサービスレベルも高く、衛生面でも配慮しています。
実際に、QBハウスに来た人の満足度は高いのです。(以下は、「キュービーネットホールディングス株式会社 2018年6月期 決算説明会資料」より抜粋)
87点は「必ず来たい」(100pt)と「また来たい」(80pt)の間です。理美容・外食の平均は80ptということなので、QBハウスに来ているお客さんは、顧客ロイヤルティが高いことがわかります。
顧客ロイヤルティが高いお客さんは、価格を気にしなくなります。
見込客は、比較的価格を気にします。
新規顧客になると、価格をあまり気にしなくなります。
そしてリピーターや贔屓客は、価格よりも価値を重視するようになります。
QBハウスは、2018年6月期 決算説明会で、値上げした理由を次のように述べています。
■価格改定の目的
–人材投資
カット未経験スタイリストの採用強化・育成投資の強化
スタイリストの労働環境改善・待遇改善
–店舗投資
より快適に過ごしていただくためのお店づくりへの投資
■価格改定に対する外部要因
–新規の国家資格取得者数の減少(理容師・美容師)
–労働需給の逼迫を背景とした人件費の上昇
単に「儲からないから値上げする」のではなく、「理容師・美容師の資格取得者が減る中で、人材と店舗投資を強化したい」という値上げの目的も明確です。
「他社にお客が流れる可能性もある」との指摘もあります。
しかし理美容業界では、QBハウスは国内552店舗を展開する最大手。理美容業界最大規模です。「たくさん作ればコストが下がる」という「規模の経済」と、「仕事の経験量が多いほどコストが下がる」という「経験曲線」の観点で考えると、理美容業界では最高のコストリーダーシップを持っています。
最高のコストリーダーシップを持つ最大手が、コストが理由で値上げせざるを得ないという状況です。規模に劣り、恐らくより高コストの他ライバルが低価格勝負を続けるのは、恐らく難しいのではないでしょうか。
フィリップ・コトラーは著書「コトラーのマーケティング・コンセプト」の中で、アマゾンのジェフ・ペゾスCEOの言葉を紹介しています。
「わが社よりも5%安く売るところが出てきても、何の心配もいらない。私が気にしているのは、わが社よりも優れた経験を提供する企業が現れることである」
「低価格」は、あくまで顧客満足の一要素に過ぎません。安さだけを武器にせず、常により高い顧客体験を追求し続けることが必要なのです。
以上のことから、QBハウスは値上げ後も、意外と客離れは少ないのではないかと私は考えています。
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