「自社の強みが見えない」という悩み


先週の夜学・永井塾のテーマは「自社の強み」でした。
最後の質疑応答で、こんなご質問をいただきました。

「『強みは、コアの技術と顧客の利益の組み合わせである』ということはわかりました。ただコアの技術はわかるのですが、顧客の利益は何を物差しに考えればいいのでしょうか?」

若干、補足します。
これは「コア・コンピタンス(=中核となる能力)」という考え方です。たとえば1950〜1990年代に世界を席巻したソニーのコア・コンピタンスは、

「電子+機械技術を統合した小型化技術(メカトロニクス)により、携帯性を提供できること」

でした。これを分解すると、こうなります。

コアの技術 = 電子+機械技術を統合した小型化技術(メカトロニクス)
顧客の利益 = 携帯性を提供できること

このおかげで、トランジスタラジオやウォークマンといった世界的ヒット商品を生み出しました。

「ではその後半の『顧客の利益』は、何を物差しにして見極めればいいのか?」が冒頭のご質問です。

顧客の利益を見極める物差しは、「顧客の課題(=痛み)の大きさ」です。

そして顧客の利益を見極めるためには、最初に「ターゲット顧客を絞り込むこと」が必要です。

①まずターゲットの顧客を見極め、
②その顧客が抱える大きな痛みを理解し、
③自社のコア技術を活かし、その痛みにベストな解決策を提供する、

ことが必要になります。

他の顧客ではあまり意味がないコア技術が、その痛みを持つ顧客にはとても有効なことがあります。

ここで事例で考えてみましょう。
1990年代に企業向け文書管理システムを開発・販売していたドキュメンタムはしばらく成長していましたが、ある時期から売上が低迷し始めました。
そこで75分野に手を広げていた文書管理の業務を、2分野に絞り込みました。

絞り込んだ分野の一つが、製薬会社向けの新薬申請業務です。
製薬会社では新薬申請の際に、25〜50万ページもの書類を用意する必要があります。この申請業務のために、人件費などで1日1億円もの費用がかかっていました。
しかも申請が遅れるとその分の特許収入が失われてしまいます。
莫大なコストと、機会損失ですね。

製薬会社の幹部は「お金はかかってもいいから、申請業務を簡単・迅速にしたい」と考えていました。もの凄い痛みを抱えていたわけです。

ドキュメンタムはこの会社に1年間集中、顧客の問題を解決しました。
その後、この新薬申請用文書管理システムは製薬会社40社中30社で採用。さらに同様の課題を持つ様々な業界に拡がっていきました。

ドキュメンタムのコア・コンピタンスは「文書を一元管理できる管理システムにより、膨大な申請業務を簡単・迅速に処理できること」ということです。分解するとこうなります。

コアの技術 = 文書を一元管理できる管理システム
顧客の利益 = 膨大な申請業務を簡単・迅速に処理できること

このように、「顧客の利益」を決める物差しは「顧客の課題の大きさ」であり、その出発点は「ターゲット顧客を見極めること」なのです。

まず考えるべきは、御社の強みを必要としているお客様がどこにいるかを、見つけることなのです。

 

 

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