自動化は、DXではありません


ITの世界で、RPAという考え方があります。RPAとは、ロボティック・プロセス・オートメーションの略。パソコン操作を自動化してくれる仕組みです。キーボードやマウスの操作が自動化されます。

たとえばクラウド上からファイルをダウンロードして、データを転記したり集計する作業とかありますよね。これまでこのような作業は、人間がマウスとキーボードを操作して、人手をかけてやっていました。でもRPAを使えば、そんな作業を自動でやってくれます。

この手の作業が膨大にある企業は少なくありません。たとえばメガバンクは、データを大量に処理する事務作業があります。そんな職場では、RPAが絶大な労働コスト削減を実現してくれます。

このように言うと…。

「なるほど、RPAを活用して、我が社もDXを推進するぞ!」

と考える方もおられるのですが、これはRPAとDXの大きな勘違いです。

ちなみにDXは、デジタル・トランスフォーメーションの略です。
デジタルを使って、いまの仕事のやり方を一気に変えてしまうのが,DXです。

RPAとDXは、実は真逆なのです。

3年ほど前に、「書類の押印作業を自動化する」という押印自動化ロボットが展示会で出展されて、「そもそも押印作業を不要にすべきじゃないの?」と話題になりました。この場合、「押印作業をロボットで自動化しよう」と考えるのがRPAで、「そもそも押印作業をなくそう」と考えるのがDXだ、と考えると分かりやすいと思います。

RPAの大前提は、「いまのパソコン定型作業を、自動化する」。たとえば、「①クラウドから顧客情報をダウンロードして→②Excelで開いて→③顧客の情報を転記して→④ファイルしたらクラウドにアップロードする」という現在の作業を、自動で行います。つまり、現在の業務を肯定します。

DXの大前提は、「いまの業務を根本的に変える」。たとえば「そんな作業は廃止しよう。顧客がスマホ入力したデータを、直接クラウドに反映させた方が、コスト削減できるし、顧客もリアルタイムでデータを確認出来るから、サービスレベルも上がるよね」と考えます。つまり、現在の業務を否定します。

既存業務を高速化するよりも、既存業務をなくした方が、全体の業務プロセスはスピードアップすることが多いですよね。DXはそこを狙うわけです。

現場主導で考え、現場の生産性を大きくアップするのがRPA。
経営者主導で考え、会社の業務そのものを変えて、生み出す価値と効率性を変革するのがDX。
このように考えると、分かりやすいと思います。

自動化の意外な盲点ですが、「自動化=DX」ではなく、むしろ真逆なので、注意したいですね。

 

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