「日本は○○だから、大丈夫」という思い込み


「安倍元首相、奈良市で不審な男に襲われる」

この一報を日経新聞の速報メールで知ったのは、2022年7月8日11:59AMでした。

この時点で、メールのタイトルを見た私は、(「襲われた」というけど、ここは安全社会の日本だ。周囲にはSPもいるだろうし、大ごとにはなっていないだろう。でも安倍さんも大変だなぁ)と思い込んでいました。

その後、続々と入ってくるニュースで、安倍さんが深刻な状況にあることを知り驚愕。その日の夕方、安倍さんは亡くなりました。

これと同じ体験をしたのは、11年前の東日本大震災で「福島第一原発が大変らしい」というニュースが伝わってきた時のこと。

この時も私は、(日本の原発だから大丈夫な筈だ)と思っていました。しかしこの時に、既にメルトダウンが発生していたのです。

我が身を振り返って感じたのは、(日本は○○だから、大丈夫なはず)というのは、幻想に過ぎないということです。

考えてみると、(日本は○○だから、大丈夫)というロジックには、何の根拠もありません。

認知心理学では「人間にはさまざまな認知バイアスがあって、事実を大きく歪めて認識してしまうことがある」と考えます。たとえば…

【確証バイアス】先入観に基づき、都合のいい情報を集めて先入観を補強する。[例] 「戦後、要人の暗殺はなかった→だから今後も大丈夫」「日本では大きな原発事故はない。品質も高い→だから大丈夫」

【正常性バイアス】災害が予想される状況でも、都合の悪い情報を無視して、「今回は大丈夫」と過小評価したがる。[例] 「あの人、不審行動しているけど問題ないだろう」「電源が失われたけど、原発事故は起こらないだろう」

(日本は○○だから、大丈夫)と思っていた私も、振り返ってみると、まさに認知バイアスに陥っていたのです。

今回の件で「SPは何やっていたんだ」と憤る方もおられるようです。確かに緩んだ警備体制見直しは急務でしょう。

一方で、ビジネスで責任を持っている私たちは、どうでしょうか?
仕事で根拠もなく、(○○だから大丈夫)と思い込んでいないでしょうか?

「今、仕事が順調でいい感じ。だから何の問題もない」
たいていはそんな時に、大きな問題の原因が見えないところで発生しています。

あらゆる人が「自分が見えていないところで何か問題が起こっていないか」と考えるようになると、メンタルにストレスがかかってしまいます。

しかし、ビジネスで責任を持つ立場であれば、自分が責任を預かっている範囲は「自分が見えないところで、何か問題が起こっていないか?」という意識を持つことが必要だと思います。

それが「経営者目線を持つ」ということだと思います。

今回の件で、一度我が身を振り返り、身を正す機会にしたい、と思いました。

 

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