私が会社員だった頃、同僚の新任マネジャーがボヤいていました。
「朝から夕方まで会議ばかり。自分の仕事がぜんぜん出来ないんですよね…」
ミーティング、風当たりが強いですよね。
「会議は時間の浪費」と言う人もいます。
経営学者のミンツバーグは29名のマネジャーに丸一日張り付き、観察した結果を「マネージャーの実像」という名著にまとめています。
ミンツバーグが観察したマネジャーは、誰もがこんな感じで仕事をしていました。
朝9時28分。スズキ部長は自販機コーナーでヤマダ君に声をかけ、客先トラブル状況について二言三言交わす。デスクに戻り、秘書のアベさんと一緒に書類の山と格闘。デスクの前を通りかかるトベ君をふと見つけ、「トベ君、あの件は保留ね」と指示。15秒後、アベさんと向き合い「さあ続けよう」。そこに人事のノナカさんが来て、以前指示した件の報告を受ける。数秒後、アベさんとの作業に戻る。すると今度は部下のシマさんが来て「A社さん受注です!」とガッツポーズ。スズキ部長は「グッドジョブ!」とハイタッチ。ここで9時35分。あっという間に7分経過。
マネジャーたちは時間に追われ、細切れ時間の中で仕事を続け、次々来る人たちと話し、時に指示を出しています。多忙な業務をこなし、様々なコミニケーションを繰り返して情報を集め、意志決定しています。
実はこの慌ただしい電話・会議・メールなどのコミュニケーション自体が、仕事そのものなのです。
マネジャーの仕事の多くは、情報やノウハウ提供。言い換えるとマネジャーは組織の情報中枢なのです。
こう考えると膝を交えたミーティングは、実はマネジャーにとって仕事を遂行する貴重な手段であることがわかります。
ミーティングを駆使し、圧倒的な競争力を生み出す会社もあります。
アイリスオーヤマはコロナ禍でいち早くマスクを大増産し、業績を大きく伸ばしました。 迅速対応できた要因の一つは、ミーティングによる意志決定の仕組みです。
多くの企業では、現場からの新商品開発の提案を経営陣が承認するのに数ヶ月かかります。アイリスオーヤマは、毎週月曜に丸一日かけて行う新商品開発会議で、すべて決めます。社長を含む経営陣、開発、営業、広報、物流の全責任者が集まり、開発メンバーの意見を元に細かい部分までその場で話し合って決定。全員が週5日のうち1日拘束されますが、ここで毎週50案件の可否を即決します。結果、圧倒的スピードで商品開発が進むのです。
「ミィーティングばかりで仕事できない」というマネジャーは、厳しい言い方をすると、マネジャーになる前の担当者意識が抜けず、貴重な時間をムダにしているのかもしれません。
むしろミィーティングを情報伝達・ノウハウ提供・意志決定の手段として戦略的に活用すれば、自分が任された組織の生産性は飛躍的に向上するはずです。
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