先週水曜朝の朝活永井塾は「ショッピングの科学」でした。テキストはパコ・アンダーヒル著「なぜこの店で買ってしまうのか ショッピングの科学」です。
ショッピングの科学とは、買い物客が購入したくなるように店や商品を変えていく考え方です。著者のパコさんは、店舗で何が起こっているのかを調査員に全て記録させ、膨大な記録を分析し、商品を買うヒントを炙り出します。このためパコさんは「ショッピング界のシャーロック・ホームズ」とも評されています。
たとえばパコさんが会社を創業した頃、こんな話がありました。
百貨店の入口で買い物客を観察していました。特に人通りが多い所にネクタイ売場があったのですが、パコさんは、ネクタイの品定めをする客が後ろから他の客に少し押されると、そこでネクタイ探しを諦めることに気がつきました。売り場の売り上げも低い状態でした。
そこでパコさんは「売上が低いのは、尻がぶつかるからだ」と報告。驚いた店長が、即刻ネクタイの棚を移動したところ、売上は急上昇。パコさんは、後ろから押されると買い物を諦めるこの現象を「尻こすり効果」と名付けました。
朝活永井塾では、このショッピングの科学について、様々な事例を交えてご紹介しました。するとプレゼン後のQ&Aで、こんな質問をいただきました。
「最近はAIのおかげで、店舗の色々なことがわかるようになりました。AIの登場で、ショッピングの科学は変わるのでしょうか?」
今回は、この時にお答えした内容をご紹介したいと思います。
確かにAIカメラやスマートショッピングカートの登場で、店舗内のお客さんの様々な行動がわかるようになりました。しかしながら、「尻こすり効果」のような現象をAIが発見できるかどうかは、まだ難しいのではないかと思います。
パコさんは「ショッピング界のシャーロック・ホームズ」と呼ばれていますが、仮にAIに名探偵ホームズが持つ様々なデータを読み込ませて、ホームズと同じ結論を導き出せるかというと、恐らくムリでしょう。なぜなら、ホームズは膨大な知識を元に様々なデータの相関関係を読み解き、さらに直観を働かせて仮説を導き出しているからです。そして導き出した仮説を容疑者や関係者にぶつけて検証し、真犯人をあぶり出します。
おそらくショッピングの科学も同じです。データを元に仮説を考えて検証するのは人間しかできません。
一方で「ショッピングの科学」の作業の中で、AIやITが代替できることもあります。たとえば従来調査員が手間をかけて行っていた店舗の入店人数や性別・年齢層・店内の導線などの記録作業は、AIが自動的に記録してくれるようになるので、人手が大幅に削減できる可能性があります。おかげで、人間は仮説を考えて検証する作業に集中できるようになります。
このように考えると、AIのおかげでショッピングの科学はさらに進化していくのではないかというのが、私の結論です。
皆様はどのように考えますでしょうか?
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