ウィズ・コロナで自ら顧客体験を損なうサービス


コロナ禍の先行きは予断を許しませんが、そんな中でも苦しいのがサービス業。お客様がコロナ前まで戻らない中、売上確保に苦戦しておられます。

私がとても気になるのが、売上を確保しようとして、顧客体験を大きく損なっているサービス業があることです。それを実感したのが、妻が美容院から帰ってきた時のこの一言です。「もうあの美容室、行くのイヤかも」

この美容院はややお高めですが、ゆったりしたソファーで順番待ち。店の居心地も良く、リラックスして髪をいい感じにセットしてくれていました。

コロナ禍で妻はなかなか美容室に行けませんでしたが、先日久しぶりに髪をカットに行きました。

まず驚いたのが、それまでお客が座っていたソファがある場所に、美顔器や化粧品、シャンプー、ドライヤーなどの様々な商品がズラッと並んでいたこと。

お客は入口近くにあるパイプ椅子に座って順番待ちです。売り物の商品にお客が押し出されている感じがします。

順番が来てカットを始めると、美容師さんからの売り込みが始まります。

「このシャンプーお勧めですよ。当店でも売ってます」

「このドライヤーもいいですよ。当店で売ってますよ」

「こんど当店でアロマセラピーのお教室をやるんです。とてもいいですよ〜。ぜひどうですか?」

妻が「そのお教室、どんな感じなんですか?」と聞くと…

「…私は参加したことがないんです。でも、とってもいいそうです!」

販売は確率戦なので、こうして売り込むと、買うお客さんが一定数出てきます。数字だけ見ると一時的に売上は上がるでしょう。しかし「居心地が良く、リラックスして髪をいい感じにセットしてくれる」という顧客体験は、大きく損なわれています。

妻は「ずっとこの店でお世話になったけど、変わっちゃった。もう行きたくないかも」。こうして一定の確率で客離れも上昇するわけで、長期的に見ると客離れが増え、売上は下がっていきます。

ちなみにこの店で腕利きのある美容師スタッフは、お店から独立を決めました。しかもこの店から徒歩5分の場所に店を出します。このスタッフは自分のお客に「独立するので、ぜひ来て下さいね」としっかりと声をかけています。この店の様子を見て(チャンス)と思ったのかもしれません。

さて、売上データで見ると、この状況は次のように見えます。

①売上が激減する(コロナ禍で来店客が減ったため)
②一時的に平均顧客単価が上昇し、売上が上昇する(接客中の営業のおかげ)
③ゆっくり顧客数が減り、売上が減る(顧客体験を損なうことによる客離れ)
④腕のいいスタッフが辞め、顧客がゴッソリ消える(見切りを付けたスタッフ離れ+顧客の大規模離脱)

確かに顧客単価を上げることは必要なことです。しかし同時に大事なことは、絶対に顧客体験を損なわないことです。

ウィズ・コロナの時代は、むしろそれまで出来なかったより高い顧客体験を提供するチャンスです。髪のコンディションをいい感じに維持するための仕組みは、スマホやサブスクと連動させれば色々と実現できる可能性があります。

逆に顧客体験を犠牲にして、目の前の売上を追いかけてしまうと、奈落の底に落ちてしまうのです。

あなたの会社では、ウィズ・コロナで自ら顧客体験を損なっていませんでしょうか?

   

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