テスラが20年間続けた、イノベーター理論の基本戦略


テスラは現時点で、世界で最も売れているEVです。
テスラの基本戦略は、EVがまったく普及していなかった2003年の創業時に、創業者イーロン・マスクがイノベータ理論に従って考え抜いて作りました。

ここでイノベーター理論を軽くおさらいです。
皆さんの知人で「最新型」という言葉に弱く、いつも一番乗りでモノを買って周囲に見せびらかす人はいませんか? あるいはいまだに「スマホはイヤ」という人もいますよね。この購入タイミングで人を分けるのが、「イノベーター理論」です。

次の5タイプがいて、市場のどの程度の普及率で買うかが決まっています。

【①イノベーター(普及率 0-2.5%)】新しモノ好き。常に一番乗り。別名、人柱。
【②アーリー・アダプター(2.5-16%)】「これ、よさげ」と思ったら、買います。
【③アーリー・マジョリティ(16-50%)】他人がいいと言ったら、買います。
【④レイト・マジョリティ(50-84%)】普及し終えたら、やっと買います。
【⑤ラガード(84-100%)】最後まで文句を言い続けますが、結局買いません。

テスラ創業の2003年時点で、EV課題は生産コストが高いことでした。そこでイーロン・マスクは、

①まずプレミアムカーとして、1000万円を超える高級スポーツカーを発売。
②その売上で、600万円のミドルクラスの4ドアセダンを作る。
③その売上で、大衆の手に届く300万円の大衆車を大量生産する。

…と考えました。(実はこの内容を、イーロン・マスクは2006年に「ここだけの秘密です」といってブログに書いています。なかなかお茶目な人です)

イノベーター理論がわかれば、イーロン・マスクがこの基本戦略に沿って市場をセグメンテーションして、ターゲット顧客を攻略してきたことがわかります。

①創業当時、EV最大の欠点は航続距離。バッテリーを大量に載せると車内が狭くなります。そこで狭い車内が当たり前の高級スポーツカーにバッテリーを大量に載せて航続距離を確保。2008年、テスラは『ロードスター』を発売しました。当時、高級スポーツカーでEVはロードスターだけ。環境意識が高いレオナルド・デカプリオのような米国のセレブ(イノベーター)がこぞって買いました。

②2012年、5人乗りのセダン『モデルS』を発売。オーソドックスなセダンで、最高速322キロ。価格600万円。ちょうどEVが一部で普及し始めた時期。BMWやアウディに対抗できるEVとして、準富裕層のアーリー・アダプターに売れました。

③2019年、大衆車『モデル3』の大量生産を開始。EV本格普及のタイミングを迎えて、豊富な実績があるテスラが生産する低価格な小型セダンとして、米国や中国を中心にアーリー・マジョリティが買うようになりました。

もしテスラは創業時にいきなり大衆車を出していたら、確実に失敗していたでしょう。テスラはセオリー通りにイノベーター理論に沿って、20年もの間、基本戦略を忠実に実践したおかげで、EV普及に合わせて大きく発展していったのです。

大切なのは最初はターゲットを絞り込み、攻略に成功した後はターゲットを広げ、ターゲット変更に合わせて戦略を変えることなのです。

 

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