安倍元首相の国葬が行われた際に、官房長官として安倍内閣を支えた菅さんの追悼の辞が、感動的だったと話題になりました。
すると翌朝、とある放送局のモーニングショーで、とあるアナウンサーがこう発言しました。
「演出側の人間として、それはそういう風に作りますよ。これ、電通が入っていますから」
この後、実際には電通は入っていないことが発覚。このアナウンサーの思い込みでした。アナウンサーは後日、番組で謝罪することになりました。
世の中を見ると、このように「それって本当に事実ですか?」といいたくなる情報が多いですよね。ワイドショーなら笑い話ですが、ビジネスでこのあたりの判断を間違えると、場合によっては致命傷になります。
ここで参考になるのが、ハロルド・ジェニーンは1984年に刊行したベストセラー「プロフェッショナル・マネジャー」です。(10月の朝活永井塾でテキストに使用しました)
ジェニーンは、1959年に米国のコングロマリット・ITTのCEOに就任。58四半期連続増益を達成。18年後に辞任するまでに売上・利益20倍、「フォーチュン500」で第11位の企業に育て上げた経営者です。
ジェニーンは…
「ほとんどのサプライズは悪い知らせだ。だからマネジメントの基本は『ノーサプライズ』。95%のサプライズを未然に防げば、残りのエネルギーを本当に必要なことに注ぎ込める。そこで必要なことは、本当の事実を、それ以外の情報から嗅ぎ分けることだ」
とした上で、こう述べています。
「4つの事実を見極めよ」
具体的には次の4つです。
❶表面的事実
例「この商品は売れ筋の最重要商品!」
→表面的に売れ行き好調に見えても、実は赤字販売だったら、最重要商品ではありません。
❷仮定的事実
例「品質は絶対的に重要だ!」
→ある日本の鉄鋼メーカーは品質に絶対の自信を持っていましたが、ある自動車メーカーへの入札で敗れました。この自動車メーカーは普及車のグローバル生産を目指していたので、そこそこの品質で、かつ全世界で調達できることを重視していたのです。このように盲目的に「品質は絶対」と信じている方は多いのですが、実は過剰品質に陥っていることも少なくありません。
❸報告された事実
例「○○さんがこう言っていた」
→冒頭の話しのように裏付け不十分なことも少なくありません。たとえば私たちは「テレビの情報だから正確だ」と思い込みがちですが、実際には正確ではないことも実に多いのです。私もテレビのワイドショー制作会社の担当者から「明朝放送分のこの情報を教えてください」と急に電話がかかってくることがよくあります(結構ドタバタ状態で制作していることもあるようです)。情報は盲目的に信じずに、ちゃんと裏を取りたいものです。
❹希望的事実
例「この案件、競合はいません」
→実は希望的観測でそう思い込んでいるだけで、実はお客様は想像もしなかった別の選択肢を検討中だったりすることもあります。
事実を見極めるには、その情報がまずこの4つのいずれかに該当しないかをチェックして、フィルターに通すことです。
そのためはジェニーンはこう言ってます。
「必要なのは、事実を確認するひたむきさ。知的好奇心。必要に応じて無作法さ」
出発点は「なんとしても事実を突き止めるぞ」という知的好奇心です。
そのためには、場合によっては相手に根掘り葉掘り聞く必要もあります。
「それはどうやって確かめたの?」「誰が言っているの?」「その人がそう言っている根拠は?」
実は私も何かあるとこのように色々と聞くので、煙たがれることも少なくありません。
ただ事実を見誤って間違った方向にいくよりはマシです。
知りたいのは事実であって、相手を信じていないわけではない、ということを伝えた上で、事実を見極めたいものです。
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