「AIでバックオフィス職30%削減」のIBM発表から学べること


世界の金融ニュースを配信するBloombergでこんな記事が掲載され、大きな話題になっています。

「AIが5年で代替へ、バックオフィス職の30%-IBMのCEO予想」

ポイントをまとめますと、

・IBMのクリシュナCEOは5月1日のインタビューで、AIで代替可能な職務は、今後数年間、新規採用を一時停止すると言明

・バックオフィス部門(人事など)で顧客に接しない業務に携わる従業員26,000人のうち、5年間で30%がAI/自動化で代替すると想像→雇用7,800名に相当

私は長年IBMに勤務してきて感じることは、IBMが経営で取り組んでいることは、ほぼ5-10年遅れで世の中に波及していく、ということです。たとえば…

・全社統一CRM
 → IBMでは90年代にプロジェクト開始、00年頃から運用 → 日本では00年代後半から本格化

・コモディティ化した事業の売却
 → IBMではlenovoへのPC事業売却は2004年 → 日本では10年代から本格化

・オフショア化(インドなどへのリソースシフト)
 → IBMでは90年代前半に試行、00年代から本格化 → 日本では00年代後半から本格化

・人事評価へのAI活用試行(ワトソン)
 → IBMでは10年代前半から試行 → 日本では現在試行開始?

IBMで一貫しているのは、徹底した事業の効率化とムダの削減です。現場の努力に頼らずに、トップダウンで仕組み化して効率化を進めているのです。さらにIBMは先進AIテクノロジーも持っています。

そんなIBMが「この5年間でAIによって多くの職務を代替する」とCEO自ら言明しました。今後5-10年で、AIによる職務代替は確実に本格化していくでしょう。

では、何が残るか? そのヒントもインタビューに書かれています。

・(クリシュナCEOによると) 具体的には人事業務のうち、雇用証明発行、部署間人事異動は自動化される。一方で従業員構成や生産性評価などは今後10年間で代替されないと予測。またソフトウェア開発部門と顧客対応業務での採用は継続する

つまり事業戦略に関わる業務、開発業務、顧客に直接接する業務などは、AI時代でも価値を生むということです。むしろこれらの業務は、AI活用で著しく価値を高める可能性もあります。

人類の歴史は、テクノロジーの進化とともにより大きな価値にシフトしていった歴史でもあります。たとえば…

18世紀… 産業革命で動力が生まれ、奴隷制度がなくなり、第二次産業が生まれました。

19世紀… 蒸気機関車が生まれ、駅馬車がなくなり、大量消費社会が生まれました。

20世紀… コンピュータが生まれ、計算業務が消滅し、知識労働が生まれました。

今回の発表も、この流れの中にあるのだと考えると理解しやすいかもしれません。

問題は、私たちビジネスパーソンがこの時代の激流の中にあってどうするか、です。これは抽象的な言い方になりますが、結局は「お客様が必要としている、自分だけの価値」を提供することに尽きるのではないか、と思います。

AIが異次元の進化をしているいま、自分自身のマーケティング戦略が問われる時代になったとつくづく感じます。

 

引用記事リンク  「AIが5年で代替へ、バックオフィス職の30%-IBMのCEO予想」(Bloomberg.com)

 

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