なぜいまだに紙の決算資料を投函するのか?


5月のGW明けは決算発表のピーク。
ということでニュースを何の気なしに見ていたら、驚愕したことがありました。

東京証券取引所(東証)の記者クラブで、企業の担当者が、決算資料をマスコミ各社ごとに忙しそうに投函している場面が映ったのです。当然、紙です。

実際には、企業の情報開示は東証が用意している適時開示情報閲覧サービス(TDnet)で開示した時点で、投資家に開示したと見なされるので、紙資料を投函しなくても全く問題はないそうです。

念のため過去を調べてみると、大企業を中心に「投函を取りやめる」というニュースも散見されます。

■「トヨタ、決算資料の投函とりやめ」(日本経済新聞、2019年4月11日)  …トヨタは記者クラブの投函をやめる方向で検討。TDnetを通じて公開、ペーパーレス化を進める。

■「日立のある決断で、東証記者クラブ消滅の危機?」(Business Journal, 2015年5月2日) …日立は資料投函を中止すると記者クラブに申し入れ。理由はコスト削減。

しかし2023年になっても相変わらず多くの企業が紙の資料の投函を続けられています。地方の企業もわざわざ手間をかけて資料投函に来たりします。このため投函代行サービスというサービスを提供している会社もあるようです。

実は私がこの場面を見た後、もっと驚いたのが、番組の報道キャスターがそれを当たり前のように報じていたことです。

日頃は「日本のDXなかなか進まないのはナゼ!?」という論調で日本企業の姿勢を嘆いているマスコミ各社が、自分たちマスコミ向けの紙の決算資料投函については、あたかも季節の風物詩のように普通に報道しているわけです。

本来は継続する必要はないのに、今でも紙の投函を継続する人たちにも、恐らくそれなりの理由があると思います。

しかし本来のDXは、このような紙の投函作業の効率化をするのではなく、このような紙の投函作業自体をやめることです。

このようなことが起こる理由は、自分が日々行っていることは、それが当たり前になっているので、外部から言われないと気がつかないためなのでしょう。

振り返ると、私たち自身の身の回りにも、そのような「当たり前=外から見るとおかしいこと」が意外と多いかも知れません。

 

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