なぜ迅速な商品開発ができるのか?


アイリスオーヤマは、新商品を矢継ぎ早に出して急成長しています。
2012年に2500億円だった売上は、昨年2022年には7800億円。
10年間で3倍の成長です。

同社の成長を支えるのは、1年で1000品目の新商品です。
この1000商品は、すべて社長が承認しています。
「そんなのムリでしょ」と思いがちですが、これを仕組みで回しています。
それが、毎週月曜日に終日行われる新商品開発会議(プレゼン会議)。
経営幹部が全員集まり、現場担当者が商品企画を5分で説明。これを1日で50商品やります。そしてその場で社長が却下したりゴーサインが出ます。

却下の場合、その場で明確に次回提案のための改善点を指摘するので、社員は再挑戦できます。

さらに実施の場合、経営幹部や主な関係者全員が会議に同席しているので、根回し不要で、新商品開発に猛スピードで取りかかれます。

最近、世界のEV(電気自動車)市場で台頭しているのが、中国のBYDです。
今年の生産台数は、テスラに次ぐ第2位で急成長中。
テスラのイーロンマスクも「最大の脅威はBYD」と言っています。
このBYDの成長を支えるのも、意志決定の速さです。

アイリスオーヤマも、BYDも、迅速な新商品開発を支えるのは、迅速な意志決定なのです。

1970年代に「日本企業の強みは、組織で合意を徹底する根回しプロセスにある」と言ったのは、ピータードラッカーでした。

確かに大きなプロジェクトや、全社方針を決定するには、いまでも組織全体での徹底した根回しが重要でしょう。

商品開発の現場がどんなに頑張ったとしても、このプロセスを、日々の新商品開発全てに当てはめると、商品開発のスピードが途端に遅くなります。

意志決定スピードの差が、企業の競争力に直結する時代なのです。

この問題を解決する一つの方法が、「OODAループ」という考え方です。これは次の4つの活動からなります。

❶観察(Observe)……あらゆる情報を取ってくる
❷情勢判断(Orient)……最重要ステップ。情報を経験や価値観と組み合わせ、洞察を得る
❸意思決定(Decide)……方針を決める
❹行動(Act)……実際の行動に移る

実は、このO→O→D→Aの4ステップを踏むのは、OODAループではまだまだ初心者レベルだと言われています。本当のOODAループは、Dを省略し、O→O→Aで動くことで、真価が発揮されます。

ちょうど宮本武蔵のような剣豪が、敵を瞬時に斬るイメージです。
相手の刹那を感じ(観察 Observe)、攻撃を察知(情勢判断 Orient)した瞬間、相手を斬る(行動 Act)わけです。考える(意思決定:Decide)プロセスを極限まで短くし、O→O→Aを一瞬で行い、敵をスピードで圧倒して斬るわけです。

アイリスオーヤマの新商品開発会議(プレゼン会議)も、まさにこの意志決定を組織全体で瞬時に行う仕組みを作り、OODAループ全体を高速で回しているわけです。

9月6日(水)の朝活永井塾は、このOODAループがテーマです。
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