最近のメディア記事を見て、「これヤバいよ」と実感するのが
リスキリング=DX
となっていることです。
本来リスキリングとは、企業のビジネス力を上げるために行うもの。「DXも大事だけど、その前に色々あるよね」と思っていました。
そう思っていましたら、日経ビジネスの今週号(2023.8.21号)の特集「残念なリスキリング」の中で、『日本企業の間では「リスキリング=DXについて学ぶもの」という発想が根強い』と紹介されてた上で、こんな言葉が紹介されています。
『デロイトトーマツコンサルティングの小野隆執行役員は「日本はとにかくテクノロジーに関するノウハウを学ばせようとしがちだが、実際には仮説を検証したり、周りを巻き込んでプロジェクトを遂行したりするスキルも必要」と話す』
そして記事では「スキル開発は事業戦略に連携させるべき」ということが述べられています。
ここ1〜2年、メディアがリスキリングを取り上げる際には「リスキリング=DX」と結びつけて紹介されることが多かったので、その反省と軌道修正が行われつつあることを感じる記事でした。
私はこの十数年間、人材育成に携わってきましたが、まさに「人材育成は事業戦略そのもの」です。
私が人材育成に携わるきっかけは、日本IBM社員時代に事業戦略責任者として事業本部長をサポートしていた際に、事業本部長から「来月から人材育成責任者をやってほしい」と言われたことでした。
「これまでマーケティング戦略や営業戦略で色々と手を打ってきた。でも人材戦略はちゃんとやっていない。ウチの事業部の人材が、事業戦略に沿ったスキルを身につければ、業績がアップするはずだ。永井さんとボクは一緒に事業戦略を作ってきたから、今度は人材育成で事業戦略を実現してくれないか?」
と言われて、人材育成を担当することになりました。
こうして人材育成の現場で実感したのは、事業戦略に沿って人材育成を行うことで、業績が向上する上に、社員も経営陣もハッピーになることです。現場で次々と起こる新しい問題に直面して、社員も困っています。しかしそんな問題と闘う武器を人材育成プログラムを通じて手に入れられることは、当然のことながら社員にとってもよいことです。
そして、そこで必要になるのはDXスキルではありません。
必要なのは、ビジネススキルです。
それは小野執行役員もおっしゃっているような仮説検証力だったり、マネジメント力、マーケティング力だったりします。
「リスキリング」でグーグル検索すると、ほとんどがDXと紐付いた結果が出てきます。 まさに「リスキリング=DX」になっているのが、日本の現状です。これでは大金と膨大な労力を投じて人材育成しても、なかなか成果には繋がりません。
この3年間、私がKadokawaさんとの協業で永井経営塾を推進しているのも、本来必要とされるリスキリングの場を整備し、リーズナブルな料金で広くご提供するためです。
今週号の日経ビジネスの特集が、「リスキリング=DX」という風潮を見直す一つのきっかけになればと願っています。
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