ChatGPTで、ビジネス戦略策定を激速化させる具体例


マーケティング研修で新規事業の戦略立案のワークを行うことが多いのですが、多くの研修参加者が悩むのが、こんなことです。

「そうは言っても、顧客の課題がよくわからない」

私はワークで「①自分たちの強みは何か?」→「②その強みを必要とする顧客は誰か?」→「③その顧客はどんな悩みを抱えているか?」→「④その悩みをどのように解決できるか?」というフレームワークで考えていただくことが多いのですが、②と③で「うーん、誰が困っているんだろう?」と悩んでしまうわけですね。

この問題を解決するには、顧客を観察して自問自答し、「顧客も気付かない顧客の課題は何だろう?」と考えることです。これは王道なのですが、難点は時間がかかることです。

一方で、最近はChatGPTなどの生成AIがかなり使えるものになってきました。
そこでChatGPTを相手に自問自答して考えることで、顧客の課題を見つけることもできるようになりました。

たとえばあなたの会社が「省エネルギー技術に関する独自の研究成果を持つ」という強みがある場合、「ではこの強みを、マーケティング的にどうすれば活かせるだろう?」と考えてみます。

こんな場合、ChatGPTにこのように質問してみます。(なおChatGPTは有償版のChatGPT4.0を使用しています)

【質問文】
あなたはすご腕のマーケターです。
新規事業を成功させるコツは、「①自分たちの技術的な強みは何か?」→「②その強みを必要とする顧客は誰か?」→「③その顧客はどんな悩みを抱えているか?」→「④その悩みをどのように解決できるか?」と考えていくことです。
①について、私たちは「省エネルギー技術に関する独自の研究成果」を持っています。そこで「②その強みを必要とする顧客は誰か?」を考えてください。

実際にやってみると、こんな回答が出てきます。

【ChatGPTの回答】
省エネルギー技術に関する独自の研究成果の強みを必要とする顧客は以下のような人々や組織です。

1.工場や製造業:省エネルギー技術はエネルギー使用の削減や効率化を実現し、コスト削減や環境負荷の軽減を目指す工場や製造業にとって重要です。

2.商業施設やオフィスビル:オフィスビルや商業施設では多くの電力が消費され、省エネルギー技術は電力使用の最適化や節約に役立ちます。

3.住宅所有者や建築業者:省エネルギー技術は住宅のエネルギー消費を削減し、暖房や冷房の効率化、断熱性能の向上などを実現するため、住宅の所有者や建築業者にとって魅力的なソリューションです。

4.オープンイノベーションを目指す企業や研究機関:省エネルギー技術の研究成果を活用することで、新たなビジネスモデルの開発や技術の進化を図る企業や研究機関も顧客となり得ます。

5.政府や地方自治体:省エネルギー技術は環境目標の達成や持続可能な社会の実現に貢献するため、エネルギー政策の推進や地域のエネルギー効率化のための取り組みを行う政府や地方自治体も顧客として考えられます。

以上が、省エネルギー技術に関する独自の研究成果を必要とする顧客の一例です。

結構、いい感じで回答してくれました。そこで興味がある分野を深掘りしてみましょう。

【質問文】
では「2.商業施設やオフィスビル」の「③そのターゲット顧客の誰も解決できない深刻な悩み」について詳しく教えてください。

するとこんな回答が返ってきました。

【ChatGPTの回答】
商業施設やオフィスビルのターゲット顧客が抱える解決困難な悩みは、以下のようなものが考えられます。

1.エネルギーコストの高騰:商業施設やオフィスビルは多くの電力を消費するため、エネルギーコストが非常に高額になる場合があります。このため、エネルギーコストの削減を求める悩みがあります。

2.環境負荷の軽減:商業施設やオフィスビルは大規模なエネルギー使用により、環境負荷が高いとされています。環境保護への意識の高まりや法規制の厳格化により、環境負荷の軽減を求める悩みがあります。

3.維持管理の複雑化:商業施設やオフィスビルは多様な設備やシステムを保有しており、維持管理は高度な知識や技術を要求されます。維持管理の複雑化により、効率的な管理方法を求める悩みがあります。

4.快適性の向上:商業施設やオフィスビルは多くの人々が利用するため、快適な環境づくりが求められます。エネルギー使用の最適化と快適性の向上の両立を図ることは、難しい課題となっています。

5.技術の進化と更新:省エネルギー技術は進化しており、新たなエネルギー効率化の手法や設備が次々に登場しています。商業施設やオフィスビルのオーナーや管理者は、迅速な技術の更新や対応が求められています。

以上が、商業施設やオフィスビルのターゲット顧客が解決困難な悩みとして抱える可能性のある課題です。

こうなると、自社がどう解決できるかががぜん興味が出てきますね。そこで遠慮なくChatGPT先生に聞いてみましょう。

【質問文】
ではそれぞれについて「④その悩みをどのように解決できるか?」を考えてみてください。

するとこんな回答が返ってきました。

【ChatGPTの回答】
商業施設やオフィスビルのターゲット顧客が抱える悩みを解決する方法は以下のように考えられます。

1.エネルギーコストの高騰への対策:
・エネルギー効率の向上を図るために、省エネルギー設備やシステムの導入を検討する。
・エネルギー使用状況のモニタリングやデータ解析により、エネルギー使用のパターンやムダを把握し、改善策を見つける。
・創エネルギーソリューション(再生可能エネルギーの導入など)を検討し、自己生成のエネルギーを利用する。

2.環境負荷の軽減への対策:
・エネルギー効率の向上により、排出されるCO2や廃棄物の量を削減する。
・再生可能エネルギーの導入や環境に配慮した設備・システムの導入により、環境負荷を軽減する。
・エコフレンドリーな資材の利用やクリーンエネルギー認証の取得など、環境に配慮した施策を推進する。

3.維持管理の複雑化への対策:
・IoT技術やビッグデータの活用により、設備の状態やトラブルの予知・管理を効率化する。
・センサーを活用して自動化・遠隔監視を行い、設備運転の最適化を実現する。
・エネルギー設備の維持管理を外部の専門企業に委託することで、専門知識とスキルを活用する。

4.快適性の向上への対策:
・エネルギー効率の改善と快適性の向上の両立を図るため、スマート建築技術の導入を検討する。
・空調や照明などの設備を効率化し、エネルギー使用の最適化と快適性の両立を図る。
・ユーザーの利用パターンや要望を分析し、個別の快適性設定を可能にする。

5.技術の進化と更新への対策:
・持続的な技術監視と研究開発への投資により、最新の省エネルギー技術をキャッチアップする。
・イノベーションや新たな省エネルギー技術の探求を推進し、積極的な技術更新を図る。
・可能な限り早期に新技術を導入し、より効果的なエネルギー管理を実現する。

以上が、商業施設やオフィスビルのターゲット顧客が抱える悩みを解決するための一般的なアプローチです。実際の解決策は、具体的な施設や要件に合わせてカスタマイズする必要があります。

 

このようにChatGPTを相手に、アイデアの壁打ちをすると、ChatGPTはその道である程度レベルの専門家として相手をしてくれて、お客様の課題についてかなり高い解像度で仮説を立てるための材料を得ることが出来ます。

この材料を元に考えていくことで、スピードが向上するわけですね。

ただ、注意点もあります。

【注意点1】あくまで「アイデア出し」と割り切る。想定外のアイデアが即時に得られるのが最大のメリット。→「一人ブレインストーミングの壁打ち相手」と心得る。

【注意点2】万能ではない。意外とウソの回答も多い。また2年ほど前までの知識しか持っていない。(ただしChatGPT4.0ならば、URLを指定すればそのサイトの情報を学習して答えてくれる)

【注意点3】だから「結果は必ず検証」が大前提。自分が「仮説検証思考」を身につけた上で、「仮説を立てる手段」と割り切れば、新規事業での仮説構築が激速化する

【注意点4】質問がカギである。ただ同じ質問でも、毎回、答えが変わる。同じ質問を繰り返してみる。

【注意点5】マーケティングのフレームワークを理解して質問すると、アウトプット品質は格段に向上する。(この例でも、最初にマーケティングのフレームワークを質問で「新規事業を成功させるコツは…」という文章でChatGPTに示している)

【注意点6】ChatGPTに頼り過ぎない。「自分自身の閃き」も大事。→自分の閃きを得る手段と心得る。

【注意点7】以上のような仮説検証思考をせずにChatGPTを使うと、実に凡庸な結果しか出ない。言い換えればAIは「思考を節約する道具」ではない。「より頭を思考に特化させる道具」として使うべし。

つまり「ChatGPTをマーケティング戦略で活用する際のコツ」は

仮説検証を前提に、仮説作りでChatGPTを使うと、
企画が爆速化し、仮説品質が向上する

ということです。

「まだChatGPTを使ったことがない」という方は、ぜひ最新AIを仮説作りに活用してみてください。 そしてビジネス速度の変化を、疑似体験して下さい。

 

いままで全員が徒競走で争っていた世界で、いきなりクルマが手に入るような状況が起こっています。

そしてChatGPTを実務で活用する企業も徐々に増えています。徒競走で、クルマで疾走するライバルに勝つのは、至難の業。まずは実際に試してみましょう。

   

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