「対話」できないビジネスパーソン


あなたのチームは「対話」ができていますか?

この10年間、大企業を中心に分かてリーダーやマネジャーに、マーケティングやマネジメントの研修をワークショップ形式で行ってきましたが、実感することがあります。

それは「なかなか対話できない組織が多い」ということです。
そしてこのことが、企業の競争力を大きく下げているのです。

会社は、顧客課題に対して、様々な社員が集まって知恵を集めて、解決策を編み出して提供しています。

知恵を集めるためには、チームで対話することが必要です。

このチームの対話は、突き詰めると2段階で進みます。

第1段階:アイデア発散フェーズ アイデアを否定せずどんどん出します
第2段階:アイデア収束フェーズ 出したアイデアを絞込んで1つにします

多くのチームは、第1段階では色々なアイデアが出てきます。
しかし第2段階のアイデア収束が、とても苦手です。その理由は、出てきた様々なアイデアを取捨選択し、多くの場合、捨てたり否定する必要があるからです。

私たちはこの「否定する」「捨てる」が苦手です。

この際に必要なのが「対立しているのは私たちの意見であって、私たち自身は対立していない」と考えることです。

でもこれって、ちょっと分かりづらいかもしれないので、もう少し深くご説明しましょう。

話し合いには、2種類あります。

■ディスカッション(議論)やディベート(論戦)

→意見を主張して、議論に勝つことが目的です。勝者と敗者が生まれます

■ダイアログ(対話)

→各自の考えを明確にして、チームの解決策を作り、全員で勝者を目指すことが目的です。

仕事で必要なのは、厳密に言うと「ディスカッション(議論)」ではなく、「ダイアログ(対話)」です。

組織学習の第一人者であるピーター・センゲは、著書「学習する組織」で、「ダイアログで必要な3点」を挙げています。

①自分の考えは「叩き台」。意見に固執しない
②参加者は仲間。肩書きや序列はもち込まない
③全員でひとつの答えを探求する

この3点、一見すると簡単そうに見えますが、現実の対話を見ていると、現実にはなかなかできていません。

必要なのは「意見対立を恐れない」ことです。そして「誰が正しいか」ではなく、「何が(どのアイデアが)正しいか」という基準で、正しいモノを突き詰めることです。

ここで意見の対立を恐れて、「ここは丸く収めましょう」なんてやっていると、チームは何も学習できません。当然ながらビジネスの競争力も落ちます。場合によっては不祥事が野放しになります。

しかし現実には、事実に基づいて意見を対立させて対話すべきなのに、意見の対立を恐れて、相手を誉めるばかり…という人は、むしろ増えているのが現実です。

「相手の言うことは、絶対に否定しない」いう人もいたりします。

実は最近流行の「心理的安全性が高い組織」とは、この「意見対立を恐れない組織」のことです。しかし多くの人が「心理的安全性が高い組織とは、意見対立がない組織である」という逆の理解をしています。

相手を誉めてばかりいるチーム、相手を絶対に否定しないチーム、意見対立を回避し続けるチームは、居心地がいいかもしれませんが、実は「対話」ができていません。

この結果、何が正しいかを見極めることができません。

ビジネスの競争力が落ち、場合によっては不祥事が起こっても見て見ぬふりをするようになり、組織は衰退していきます。

私はマーケティングやマネジメントの企業向けワークショップ研修を行う際には、この点を常に意識していただくように、最初の受講される皆様にガイドするようにしています。

さて改めてお尋ねします。あなたのチームは「対話」ができていますか?

     

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