新規事業の市場規模と売上は「円柱」をイメージせよ


私は様々な企業様で、新規事業立ち上げのワークショップを行っています。
ここで皆さんが苦労されることがあります。それは…

「新規事業の市場規模と売上を見積もること」

色々な市場調査データを探して、数字を引っ張ってきて、色々と計算する人もいます。かく言う私も、若手製品プランナー時代はそうやっていました。

でも、いくら市場データを調査しても、なかなか上手くいかないものです。

ここで市場規模と売上を予測するコツがあります。

それは、円柱をイメージすること。

図のように、

・円柱の体積 = 市場規模
・底面積 = 顧客の数
・高さ = 課題の深刻さ
・円柱の水の高さ=自社シェア
・水の量 = 自社の売上

と考えると、

円柱の体積(市場規模) = 底面積(顧客の数) × 高さ(課題の深刻さ)
水の量(自社の売上)  = 市場規模 × 自社シェア

になります。

具体的な例で考えてみましょう。ペットフード市場です。

・日本国内で犬や猫といったペットの数は、約1600万匹です。
・ペット一匹にかかるペットフードの支出を、年間4万円程度と想定します。
・市場規模は、1600万匹 × 4万円 = 6400億円です。
・自社がペットフード市場で強みがあり、シェア20%が取れれば、売上1280億円です。

ちなみに矢野経済研究所によると、2022年のペットフード市場規模は6083億円です。こんな大雑把な計算でも、市場規模の見積りはほぼ合っています。

この円柱がイメージできれば、色々なパターンが考えられるようになります。

【残念なパターン】
顧客は多いけど、顧客に刺さらないパターンです。市場を大きく取りすぎて、自社の強みが活きないのです。

多くの人は「市場規模は1兆円だ。シェア1%取るだけで、売上100億円になる!」というように考えがちですが、市場では激しい競争が繰り広げられています。たいていの場合、強みがなければ1%すら取れずに、失敗プロジェクトとなります。

【新市場開発パターン】
逆に顧客にはすごく刺さるのですが、ターゲット顧客数が少ないパターンです。ニッチ戦略により、まだ勝者がいない市場で強みを活かしてダントツのシェアを確保し、市場を押さえます。

その市場に成長性があれば、化ける可能性もあります。1998年頃にニッチ市場で混戦状態だったネット検索市場で、後発にもかかわらず技術的優位性を活かし、市場を制覇して巨大化したグーグルはまさにこのパターンです。

さらに隣接する市場で数をこなしていけば、無双化する可能性もあります。最初に書籍オンライン販売市場を制覇した後、CD/DVDオンライン販売市場に進出し、徐々に商品群を広げたアマゾンはこのパターンです。

【理想パターン】
既存市場で、顧客はそこそこいて、かつ顧客に刺さるパターンです。ここではウォンツ(=ありそうでなかったモノ)の発掘が必要になります。

成熟している家電商品市場で、コードレス掃除機、サイクロン掃除機、速乾性能と髪ダメージを軽減したヘアドライヤー、羽根がない扇風機など、様々なヒット商品を生み出しています。

改めて、新規事業を考える際には、この円柱をイメージしてみてはいかがでしょうか?

     

■当コラムは、毎週メルマガでお届けしています。ご登録はこちらへ。