会議のあり方は、現代では大きく変わっている–週刊東洋経済の特集「会社を変える会議」から


週間東洋経済2013/6/22号の特集「会社を変える会議」の冒頭で、次のようなエピソードが紹介されています。

—(以下、引用)—

こんな話もある。ある中国企業は日系企業の役員が訪中するというのでその場で業務提携の契約書にサインするものだと思っていた。ところが「日本に持ち帰って役員会にかける」と言う。帰国して1週間経っても音さたがないので電話すると「役員会は来月」。翌月になって問い合わせると、「今月は議題が多くて役員会の俎上に載らなかった」。日本企業の意思決定の遅さに絶句したその中国企業は、日系以外の会社と業務提携することにした。

—(以上、引用)—

こんな状況、「あるある」と思いがちではないでしょうか?

「だから意志決定の迅速化が必要なのだ。困ったものだ」と思われるかもしれません。

しかし物事は常にコインの裏表でもあります。

「これと似たような状況をある有名な本で読んだ記憶があったなぁ」と思い探したところ….見つかりました。

この本では、同じ状況を全く逆の視点から描いています。ちょっと長文ですが、最初に引用します。

—(以下、引用)—

日本について見解の一致があるとすれば、それは合意(コンセンサス)によって意志決定を行っているという点であろう。

(中略)

アメリカでは、ライセンス契約の日本側の交渉相手が数カ月ごとにチームを送りこみ、交渉のごときものを始めからやり直す理由を理解できない。一つのチームが克明にノートしていく。ひと月後には、同じ会社の別のセクションが、初めて話を聴くという態度で克明にノートしていく。
信じられないであろうが、これこそが日本側が真剣に検討している証拠である。

日本では契約の必要を検討する段階で、契約締結後に関わりを持つことになる人たちを巻き込んでおく。関係者全員が意志決定の必要を認めたとき、初めて決定が行われる。このとき、ようやく交渉が始まる。その後の日本側の行動は迅速である。

こうして、われわれが決定と呼ぶ段階に達したとき、日本では行動の段階に達したという。

(中略)

日本の意志決定は独特のものである。…だがその基本は、日本以外でも十分に通用する。それどころか、これこそ効果的な意志決定の基本である。

—(以上、引用)—

この本はピーター・F・ドラッカーの「マネジメント[エッセンシャル版]: 基本と原則」です。あの「もしドラ」の原作がベースにした本ですね。

この意志決定方法は「効果的な意志決定の基本」であるとあのドラッカーも評価しているのです。

 

ただしドラッカーが本書を書いたのは、40年前の1973年です。

当時、日本は高度成長期のまっただ中でした。社会学者エズラ・ヴォーゲルが著書「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を出版したのが、その6年後の1979年。

40年前にドラッカーに「非常に効果的」と評価されたこの方法、現代は「どうしようもない意志決定の遅さ」と評価されてしまっている訳ですね。

その理由は、40年前の経営資源が「ヒト+モノ+カネ+情報」だったのに対して、ネット社会になった現在は「ヒト+モノ+カネ+情報+時間」となり、時間が貴重な第5の経営資源となったからではないかと思います。

 

40年前と同じスピード感覚で動いていると、冒頭の例にあるように、世界から取り残されてしまうということですね。

 

時間が貴重な経営資源になっているからこそ、仕事に迅速さが求められています。

例えば数十倍迅速に動けば、少々の間違いは動きながら修正することも可能です。

私は組織を動かす上で、会議はとても大切だと思います。ただ時間だけを浪費する意味のない会議は極めて有害です。限られた時間内に、予め決められた課題に対して確実に結論を出す会議が必要です。

そこで、ホワイトカラーの生産性を上げる方法論として、この週刊東洋経済の特集に繋がっているのではないかと思います。

 

本特集は合計32ページ。とても力が入っています。会議にお悩みの方は、ヒントが見つかるかもしれません。

 

2013/6/17 8:00修正:ご指摘をいただき修正しました(赤字)