「脳の中で、普段使っていない部分を使っている感じで。とても疲れました」
ワークショップに参加された方が、休憩時間にこのようにおっしゃいました。私は答えました。
「そうでしょうね。でもこれ、ジョギングのトレーニングと同じなんですよ」
私が企業様向けに行っているワークショップでは、お客様企業の新商品を題材に、「お客様が買う理由」(バリュープロポジション)をどうするかをチームで議論して作り上げ、発表し、社員同士で議論いただいています。
この「お客様が買う理由」を作るために、
・自社の強みは、何か?
・その自社の強みを必要とするお客様は、誰か?
・そのお客様は、どのような課題を持っているか?
・お客様は、どうすれば自社を選ぶか?
これらを首尾一貫して、チームで議論をしながら、徹底的に考えていきます。
とは言え、これを徹底的に考えるのは結構大変です。「こんなこと、考えたこともない」とおっしゃる方も多く、皆さんは議論を通じて七転八倒しながら苦労して答えを導き出していきます。
実は、かく言う私も同じでした。
私の場合は、IBMでマーケティング戦略担当者だった2000年頃、IBMの戦略に接するうちに「バリュープロポジション」というまったく新しい概念に出会い、この考え方に沿って担当する事業のマーケティング戦略を一人で導き出して、成果を挙げられるようになるまで2〜3年間かかりました。
皆さんと同じ苦労をしてきましたので、「とても疲れる」とおっしゃるのもよくわかります。
しかしこれを苦労して徹底的に考え抜くことで、お客様の方から自社商品やサービスを選んでいただけるようになり、日々の販売活動では苦労が逆に大幅に減っていくのです。
さらに「お客様が買う理由」を自力で考えて導き出せる経験を積むことで、その後は次第に楽に導き出せるようになります。
だから、これはジョギングのトレーニングと同じなのです。
はじめてジョギングをして、500メートル走っただけで息が上がり心臓がバクバクする経験をした方は多いのではないでしょうか?
しかし最初は軽いウォーキング程度から始めたとしても、それを週に2〜3回行う習慣をつければ、数ヶ月後にはある程度の距離を楽々ジョギングできるようになります。次第に必要な筋肉が付いてくるからです。中には数年後にはフルマラソンに出る人もいたりします。
「お客様が買う理由」を考え抜くのも同じです。今まで考えたことがなかった方は、これを考えるのはとても頭を使いますし、疲れます。しかし日々この考え方をすることで、頭の中に「お客様が買う理由」を作る回路が作られるようになり、次第に割とスムーズに考えられるようになるのです。
私自身、このフレームワークで十数年間考えているので、ワークショップで各チームから発表される「お客様が買う理由」に対して、色々な視点で議論のポイントを見つけることが出来るようになっています。
「自社の強み」や「お客様のこと」を一番知っているのは、外部のコンサルタントではありません。自社の社員です。
だからこそ、自社の社員が「お客様が買う理由」を作り検証する方法論を身に付ければ、その会社は必ずマーケティング志向に変革していくのです。
そしてそのような会社が増えていけば、日本の企業の競争力も大きく向上し、日本経済も元気になっていきます。
是非、習慣化したいものですね。
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